研究課題/領域番号 |
21K15925
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
瀧川 英彦 広島大学, 病院(医), 助教 (10883027)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 大腸癌 / LAT1 / 間質 / 同系免疫応答モデル / 同所移植モデル / JPH203 / RNAシークエンス |
研究実績の概要 |
当初研究目的として挙げた以下の4点についての研究実績 【①ヒト大腸癌組織におけるL-type amino acid transporter 1(LAT1)発現状況と腫瘍微小環境との関連性】154例のヒト大腸癌切除標本に対して、LAT1の免疫染色を行い臨床病理学的な所見との関連について解析を行った。LAT1発現はヒト大腸癌の癌部において68.8%に陽性であり、腫瘍のStage、TNM分類のT因子、N因子と有意な相関関係を認めた。 【②癌細胞株でのLAT1発現量依存性のJPH203の増殖抑制効果】リアルタイムPCRで10種類の大腸癌細胞株でのLAT1発現量を評価し、続いて、LAT1特異的阻害剤JPH203を用いて、in vitroでの暴露実験を行いタイムラプスシステムによる増殖阻害作用の評価を行い、JPH203が、濃度依存性に効果を発揮することを示した。LAT1発現量とJPH203の増殖抑制作用の間には、相関関係は必ずしも見られなかったが、LAT1発現の少ない細胞株ではJPH203による細胞増殖抑制効果は乏しいことが示された。 【③同系免疫応答・間質豊富大腸癌マウスモデルでのLAT1阻害剤JPH203の治療効果】Balb/cマウス由来の大腸癌細胞株CT26を、同マウス由来の間葉系幹細胞と混和し、同マウスの回盲部へ同所共移植し、同系免疫応答・間質豊富大腸癌同所移植モデルを作成し、JPH203による治療実験を行い、有意な腫瘍重量、体積、転移の抑制効果を腫瘍のマクロ像、ならびに、ルシフェラーゼ遺伝子導入細胞株移植モデルを用いてIVIS imaging systemにより確認した。 【④抗腫瘍効果の網羅的解析の準備】③で作成したマウスモデルにおいて、非治療群とJPH203による治療群、それぞれのマウス腫瘍組織からRNAシークエンスによる網羅的遺伝子発現解析を行う際に使用する予定であるRNAの抽出を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要欄に示した通り、大腸癌臨床検体でのLAT1発現状況の免疫染色による評価と解析は終えている。 また、複数の大腸癌細胞株でのLAT1発現量に関するPCRでの検討、LAT1阻害剤JPH203による細胞増殖抑制効果に関する検討も行った上で、癌細胞株を選定し、マウスを使用したJPH203単独投与による治療実験も終了し有効性が確認されている。 マウス腫瘍から抽出したRNAのクオリティーチェックまで終了しており、研究は概ね予定通り進展している。第30回 日本がん転移学会学術集会・総会でもその成果を報告した。次年度は、抽出RNAを用いたRNA sequenceを行い、さらに解析を進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、動物実験で得られた結果が再現性のあるものかを検証しつつ、得られた移植腫瘍から抽出したRNAを用いてRNAシークエンスを行い、網羅的に遺伝子発現解析を行う。我々が注目している腫瘍間質系、腫瘍免疫系の遺伝子群の発現量がJPH203投与によってどのように変化しているかをGSEA解析にて分析していく。 さらに網羅的解析で得られた知見に関して、ヒト臨床検体での免疫組織学的検討とLAT1発現状況との対比、ならびに、マウスモデル腫瘍でのJPH203投与が腫瘍組織に及ぼす影響の免疫組織学的な解析により、validationしていく予定である。 これらの解析を通して、大腸癌に対してLAT1が与える影響、ならびにLAT1特異的阻害剤であるPH203の作用機序を明らかにしていく予定である。
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