Large neutral amino acid transporter (LAT) familyは必須アミノ酸の取り込みに重要な役割を演じる輸送体familyでありLAT1-4から構成される。これらのうちLAT1は癌dominantに発現しており、LAT1を阻害することで、癌でのアミノ酸取り込みが抑制し、癌を飢餓に至らしめることが期待されている。近年、LAT1特異的阻害剤であるJPH203が開発され、その臨床的有用性が注目されている。我々は、大腸癌におけるJPH203の抗腫瘍効果を示すとともに作用機序を明らかにすることを目的とした。 データベースでの解析、154例の大腸癌外科切除標本を用いた臨床検体でのLAT1発現に関する免疫組織学的評価、10種類の大腸癌細胞株を用いたライブセルイメージングによるin vitroでの検討、BALB/cマウス由来の大腸癌細胞株CT26と間葉系幹細胞をBALB/cマウスの回盲部に移植して作成して同系免疫応答の間質豊富な大腸癌マウスモデルを作成し、治療実験を行い、大腸癌に対するLAT1阻害剤(JPH203;ナンブランラト)の有効性を示した。 また、マウスモデルでの治療検体を用いたRNAシークエンスによる網羅的解析により、LAT1阻害により、従来言われている増殖pathwayなどへの作用の他、腫瘍間質への抑制作用が示唆された。2023年度は,この網羅的解析により得られた腫瘍微小環境への影響に関して154例の臨床検体、in vitro実験、マウス腫瘍検体を用いて詳細なvalidation実験を行った。 LAT1阻害剤JPH203は、増殖経路やアミノ酸代謝だけでなく、腫瘍間質反応も阻害し、新規治療薬として有効であると考えられた。今後間質豊富な癌腫への応用や、他剤との併用を考慮するにあたって、重要な洞察を与える研究成果を得た。
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