研究課題
胃癌由来エクソソームへの薬剤封入による薬効評価に関しては、初年度の検討結果より治療効果改善に資する知見は得られず、以後の年度においては癌由来エクソソームの微小環境における変化や胃癌悪液質に及ぼす影響の解析へと発展的に軌道修正した。当初の予定通り患者組織由来がんモデルの作成は継続した。胃癌悪液質モデルに関しては細胞株(MKN45, NUGC4)を用いた皮下腫瘍・腹膜播種モデルにおける体組成を含め評価し、悪液質を反映するモデルの同定を行うとともに、胃癌悪液質とsPD-L1の関連を解明し、論文報告(Matsumoto Y. et al. Molecular and clinical oncology. 2023;18(5):39.)を行った。胃癌患者における体組成や脂肪の質に関する検討・癌と脂肪細胞のエクソソームを介した相互作用に関しても解析を継続している。本解析の一部は現在AGSurgery誌に投稿中である.癌由来エクソソームの微小環境 (低酸素環境)における変化に関しても解析を継続し、ヒト食道扁平上皮癌細胞株(TE1, T.Tn, KYSE960)の低酸素環境下でのエクソソーム中に増加するmiRを同定した。共通して低下するmiRのひとつであるmiR-185に関して、in vitro studyや患者血漿を用いた臨床病理学的解析を行い腫瘍抑制効果を持つことを示し、この結果はOncology Letters誌に掲載予定である。胃癌PDXの作成は樹立率が低く細胞株の樹立は達成できなかった。同時期に樹立した小腸癌PDXより長期間培養可能かつ造腫瘍能、CEA,CA19-9産生能を有する細胞株SiCry-15Xを樹立し、本結果はOncology Letter誌に投稿中である。今後も胃癌細胞株やオルガノイドを樹立し癌由来エクソソームを対象とした治療開発をすすめていく予定である。
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Molecular and Clinical Oncology.
巻: 18 ページ: 39
10.3892/mco.2023.2635.