本研究の目的は、膵頭十二指腸切除(PD)後に生体内で起こる脂質吸収・代謝の変化の詳細を明らかにすることである。本研究では、PDを施行した患者100例の術前および術後3ヶ月血漿を質量分析計という新しい方法を用いて解析し(網羅的脂質メタボローム解析)、継時的かつ網羅的に脂肪代謝産物の血中濃度の変化を測定した。本研究の網羅的解析の結果、PD前後の検体から16種類 の脂肪酸(9種類の必須脂肪酸、7種類の非必須脂肪酸)を検出し、術後には有意に必須脂肪酸濃度が低下していることが確認された。さらに、術後脂肪肝発症はPD術後の約30%に認められ、脂肪肝発症と必須脂肪酸濃度の間に相関関係が認められた。
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