研究実績の概要 |
てんかん手術のため一時的に頭蓋内電極を留置した患者を対象に水の自由嚥下を指示し、その際の頭蓋内電極信号を解析した。8名の結果を解析したところ、嚥下に関連してHigh γ活動(75 - 150 Hz)と呼ばれる高周波律動変化が中心溝の外側領域やシルビウス裂に沿った脳領域に特異的に出現することがわかった。一方、低周波帯域であるβ帯域 (13-30Hz)の活動の抑制は嚥下のため開口した際に広範囲に出現し、この抑制は嚥下が完了するまで継続しその後、リバウンドを起こすことがわかった。このように、嚥下に関連し特異的な活動を示すのはβ帯域の活動ではなく、High γ帯域の活動であることがわかり、英語論文として発表した (Hashimoto H, et.al. Annals of Clinical and Translational Neurology, 8:1224-1238, 2021)。また、嚥下以外にも開口時や水の注入時にもHigh γ活動が出現することがわかり、これらを用いて、運動関連のHigh γ活動はα帯域とカップリングを起こし、感覚関連のHigh γ 活動はHigh γ出現時にθ帯域とカップリングを起こすことがわかった。この運動と感覚関連のHigh γ活動の神経生理学的な違いを論文として発表した (Hashimoto H, et. al. iScience, 24, 2021)。これらの結果は、今後の嚥下ニューロモデュレーション研究の発展に寄与するものと期待される。 研究の中で取得したスキルを用いて、てんかん発作時の高周波活動と低周波活動の関連をPhase-amplitude couplingの手法を用いて解析した。焦点関連てんかんの、焦点起始両側強直間代発作時のカップリング現象を英語論文で報告した。
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