研究実績の概要 |
子宮平滑筋肉腫は子宮平滑筋を発生母地とする間葉系悪性腫瘍であり、全子宮悪性腫瘍に占める割合は3%程度と稀少疾患であるが、早期より肺や肝臓などに血行 性に転移し、上皮性悪性腫瘍に比べ、予後不良である。新規分子標的薬が肉腫疾患において使用されるようになり、一部の奏功例も認められるものの長期生存例は少なく、薬剤選択や治療予後予測における確立したバイオマーカーが存在しないという問題点がある。がん抑制遺伝子のTP53,RB1,PTENに欠失や変異が認められるものの、neoantigenとなりうる遺伝子変異量は低い子宮平滑筋肉腫では、免疫チェックポイント阻害剤も含め、分子標的薬は十分な治療効果を上げていない。我々の研究グループでは子宮平滑筋肉腫のエピジェネティクスに着目した革新的新規治療戦略の構築を試みた。具体的には子宮平滑筋肉腫の既存検体における既報の遺伝子変異およびケモカインレセプターの免疫組織染色および病理組織学的なデータと予後とを検討した。また子宮平滑筋肉腫細胞株における遺伝子変異についてPCRにて確認した。その結果、子宮平滑筋肉腫細胞株においてケモカインCXCR3の高値を認めることと、患者検体の平滑筋肉腫を含む部位の免疫組織染色においても、正常平滑筋組織には認めないCXCR3受容体の発現が多く認められた。しかし、これらとがん抑制遺伝子TP53,RB1,PTENの変異、欠失には明確な相関が認められなかった。また、臨床的予後はいずれも極めて不良あったため、予後予測マーカーとしては有用性を示すことはできなかった。
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