頭頸部がん微小環境におけるACLPの機能解明と新規治療法の開発

2023 年度 研究成果報告書

• 研究課題/領域番号: 21K16846
• 研究種目: 若手研究
• 配分区分: 基金
• 審査区分: 小区分56050:耳鼻咽喉科学関連
• 研究機関: 札幌医科大学
• 研究代表者: 萬 顕 札幌医科大学, 医学部, 訪問研究員 (20792120)
• 研究期間 (年度): 2021-04-01 – 2024-03-31
• キーワード: 腫瘍微小環境 / がん関連線維芽細胞 / 細胞外基質 / 腫瘍微小免疫環境

研究成果の概要

がん線維芽細胞(CAF)におけるACLPの解析として頭頸部扁平上皮がんの臨床検体より採取したCAFを用いて、機能解析を行った。まずACLPが細胞収縮やゲル収縮能などCAFの活性化に関わることやコラーゲン分泌に関与することを明らかにした。がん細胞はCAF由来のACLPにより上皮間葉転換を介して遊走・浸潤能を促進することやCDDP耐性を亢進することを明らかにした。さらにACLPをノックダウンさせたCAFと癌細胞を共培養する実験系でCAF由来のACLPがCD8＋T細胞の腫瘍細胞へのリクルートメントを阻害する可能性が示された。今後は腫瘍微小免疫環境におけるCAFとACLPの役割について研究を進めたい。

自由記述の分野

腫瘍微小環境

研究成果の学術的意義や社会的意義

腫瘍は増大する際に腫瘍間質を形成するが、この機能的意義については明らかになっていない。我々はACLPという分泌タンパクに注目して腫瘍間質細胞の働きに注目して研究を行ってきた。ACLPは腫瘍間質細胞から分泌され、癌細胞に対しては癌細胞の遊走・浸潤能を亢進することで腫瘍促進的に働くことを明らかにした。また腫瘍免疫に重要なCD8陽性T細胞に対してはACLPを分泌を介してT細胞の腫瘍内浸潤を阻害するという腫瘍免疫抑制に働く可能性を示した。このようにACLPは腫瘍腫瘍間質を細胞に発現し多機能的に腫瘍を促進するポテンシャルを持ったタンパクであることが明らかになった。