研究課題/領域番号 |
21K16978
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
尾崎 愛美 日本大学, 歯学部, 助教 (10867930)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 加熱式タバコ / プロピレングリコール / エアロゾル / 歯周病 / 骨形成機能 / グリセリン / 骨芽細胞 |
研究実績の概要 |
喫煙は歯周病の進行に大きな影響を及ぼす環境リスクファクターであるが、近年急速に普及している加熱式タバコは、従来の紙巻きタバコに比べて、歯周病にどのような影響を及ぼすか細胞・分子生物学的に明確に示した報告はほとんどない。 また、加熱式タバコはニコチンやタールが減少する一方で、プロピレングリコールやグリセリンは従来の紙巻きタバコより多く含まれている。プロピレングリコールは、過度に加熱すると発がん性物質を産生することや肺炎を起こすことが報告されており、加熱式タバコは30-350℃に加熱されるため炎症を惹起させる可能性が示唆される。 以上のことから、加熱式タバコに多く含まれるプロピレングリコールやグリセリンも歯周病を助長するのではないかと考え、骨芽細胞にプロピレングリコールやグリセリンを添加した際の影響について検討した。 本研究では、マウス頭蓋冠由来株化骨芽細胞であるMC3T3-E1細胞を使用し、プロピレングリコールとグリセリンをそれぞれ単独または混合して加えた培地、ならびにこれらを添加しない培地(コントロール)で培養した。細胞数はcell-counting kit-8で調べ、遺伝子発現はreal-time PCR法で調べた。 その結果、細胞数はコントロールと比較し、プロピレングリコールとグリセリンの単独添加と混合添加で有意に減少した。遺伝子発現は、TNF-αではコントロールに比べてプロピレングリコールとグリセリンの単独添加と混合添加で有意に増加し、IL-α はプロピレングリコールとグリセリンの混合添加で有意な増加を認めた。また、骨シアロタンパクとオステオカルシンは、プロピレングリコールとグリセリンの単独添加で増加傾向を示した。 以上の結果より、プロピレングリコールやグリセリンは細胞を傷害し、炎症を惹起すること、さらに骨芽細胞の骨形成を一時的に促進させる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在、加熱式タバコは様々な種類が販売されている。従来の紙巻きタバコより加熱式タバコに多く含まれる成分として、プロピレングリコールやグリセリンが代表的であるが、その量や加熱する温度は一定ではなく、商品によって異なっている。そこで、まずは最もプロピレングリコールを多く含み、低温加熱式の商品の濃度で検討を行うこととし、細胞培養を行った。 その結果、プロピレングリコールとグリセリンを高濃度添加すると細胞が傷害されることがわかった。さらに、RNA量の回収量も著しく低下し、遺伝子発現を調べることができなかった。 以上のことから、培養条件設定に時間を要したため、進捗状況がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今回、従来の紙巻きタバコより加熱式タバコに多く含まれるプロピレングリコールやグリセリン単独の短期使用で骨芽細胞にどのような影響を与えるか明らかにした。その際、最もプロピレングリコールを多く含み、低温加熱式の商品の濃度で検討した。 そのため、次は最も日本で普及している商品の濃度および長期作用による骨芽細胞への影響について同様の検討を行う。 さらに、プロピレングリコールやグリセリン単独での影響を明らかにした後は、加熱式タバコが歯周病患者にどのような影響を与えるか検討するため、歯周病による炎症を想定し、TNF-α を加えた培地にプロピレングリコールやグリセリンを作用させ、骨芽細胞への影響について検討を行う。 また、その後は実際の加熱式タバコを吸っている状況と近い方法である、タバコ煙濃縮物を使用し、同様の検討を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた研究計画がやや遅れており、それに伴い、計画の後半で使用予定であった物品を購入しなかったため、残金が生じた。 使用計画について特段の変更はなく、繰越金や令和4年度助成金を合わせて、実験に必要な消耗品、細胞培養に必要な試薬、遺伝子発現解析試薬、タンパク発現解析試薬および実験用試薬(各種加熱式タバコ)に使用する予定である。
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