研究実績の概要 |
近年, 使用者が急増している加熱式タバコは, ニコチンやタールなどの有害物質が大幅に軽減されるタバコ商品として話題となっている。そのため, 従来の燃焼性タバコとは異なり, 加熱式タバコは吸っても身体に為害作用がない商品であると誤った認識を持ったまま使用している者が多く, 今後も使用者が増加する可能性が高い。しかし, 喫煙が歯周病の環境面における最大のリスクファクターであることは周知の事実であり, 加熱式タバコは近年普及した製品のため, その有害性について現在検討段階である。特に, 歯周組織の骨形成にどのような影響を及ぼすか細胞・分子生物学的に明確な影響を示した報告はほとんどない。そこで本研究では, 加熱式タバコから抽出したタバコ煙抽出液が骨芽細胞に与える影響について検討した。 タバコ煙抽出液は, 試験管, 注射筒および加熱式タバコをシリコンチューブで連結した装置を先行研究 (Nishino Kazuya et al., J Bone Joint Surg Am, 103) を参考に作製し, リン酸緩衝生理食塩水をタバコ煙にさらして得た。細胞は骨芽細胞様細胞である MC3T3-E1 細胞を使用し, 加熱式タバコ煙抽出液を含む培地で培養してその影響を検討した。 その結果, タバコ煙抽出液を作用させると細胞数は有意に減少し, 骨シアロタンパクやオステオカルシンなどの遺伝子発現も減少傾向を示した。さらに, アルカリフォスファターゼ活性についてもタバコ煙抽出液を作用させると有意に減少し, アリザリンレッド染色においても染色性が低下した。 以上のことから, 加熱式タバコの煙に含めれる成分は, 骨芽細胞の増殖と骨形成能を抑制し, 骨リモデリングのバランスを破綻させる可能性が示唆された。
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