口腔癌に対する癌浸潤ミエロイド系細胞を標的とした免疫学的治療戦略の開発

2023 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 21K17111
• 研究機関: 富山大学
• 研究代表者: 立浪 秀剛 富山大学, 学術研究部医学系, 助教 (30850268)
• 研究期間 (年度): 2021-04-01 – 2024-03-31
• キーワード: 口腔癌 / 腫瘍免疫 / 骨髄由来抑制性細胞

研究実績の概要

骨髄由来抑制性細胞（Myeloid-Derived Suppressor Cell;以下MDSC）を標的とした新規治療薬として、既存の治療薬の他に口腔扁平上皮癌マウスモデルを用いた抗CD73抗体による実験系を予定したが、細胞毒性が強いため薬剤を変更した。免疫賦活剤として他の癌腫で注目されているPak4(P21-Activated Kinase4)阻害剤あるいはCD36阻害剤あるいはmTOR阻害剤(mammalian target of rapamycin)を用いて、治療実験系を行なった。
in vitro T細胞増殖試験による機能解析によって、免疫抑制機能について評価した。抗CD73抗体を用いた予備実験を行なった結果、細胞毒性を強く認めた。そのため、2020年以降で、免疫賦活剤として口腔扁平上皮癌への応用が期待されているPak4(P21-Activated Kinase4)阻害剤あるいはCD36阻害剤あるいはmTOR阻害剤(mammalian target of rapamycin)を用いた実験系に変更した。結果、両者とも毒性に配慮した濃度でT細胞に好影響を与えることを実証した。MDSCの標的化戦略に基づいて抗腫瘍効果を、マウスモデルを用いた治療実験で検証した。Pak4阻害剤あるいはCD36阻害剤、mTOR阻害剤を用いて単剤による抗腫瘍効果に関与する免疫学的修飾効果を解析した。結果、Pak4阻害剤では通常型樹状細胞を増強しT細胞を活性化させ抗腫瘍免疫応答を増強することを確認した。CD36阻害剤では、MDSCを減少させ、相対的にT細胞分画を増加させるため抗腫瘍免疫応答が増強することを確認した。mTOR阻害剤では、MDSCならびに制御性T細胞を減少させ、キラーT細胞を増加・活性化することで抗腫瘍免疫応答を増強することを確認した。

研究成果

• [雑誌論文] Neutrophil-to-lymphocyte ratio as an early marker of outcomes in patients with recurrent oral squamous cell carcinoma treated with nivolumab (2023)
  • 著者名/発表者名: Tachinami Hidetake、Tomihara Kei、Yamada Shin-ichi、Ikeda Atsushi、Imaue Shuichi、Noguchi Makoto
  • 雑誌名: British Journal of Oral and Maxillofacial Surgery 巻: 61 ページ: 320～326
  • DOI: 10.1016/j.bjoms.2023.03.012
  • 査読あり
• [雑誌論文] Treatment of severe micrognathia in an adult with distraction osteogenesis: A case report (2023)
  • 著者名/発表者名: Sekido Katsuhisa、Fujiwara Kumiko、Tachinami Hidetake、Imaue Shuichi、Hanashiro Keishi、Noguchi Makoto
  • 雑誌名: Clinical Case Reports 巻: 11 ページ: e7327
  • DOI: 10.1002/ccr3.7327
  • 査読あり
• [雑誌論文] Successful treatment with nivolumab in a patient with unresectable oral squamous cell carcinoma following ineffective chemoradiotherapy (2023)
  • 著者名/発表者名: Sekido Katsuhisa、Imaue Shuichi、Tachinami Hidetake、Tomihara Kei、Naruto Norihito、Yamagishi Kentaro、Ikeda Atsushi、Fujiwara Kumiko、Noguchi Makoto
  • 雑誌名: Clinical Case Reports 巻: 11 ページ: e8219
  • DOI: 10.1002/ccr3.8219
  • 査読あり
• [雑誌論文] Complete Response to Cetuximab Plus Paclitaxel Therapy in Nivolumab-Refractory Patients in Distant Metastasis of Squamous Cell Carcinoma of the Tongue: A Report of Two Cases (2023)
  • 著者名/発表者名: Tachinami Hidetake、Tomihara Kei、Takatsuka Danki、Ikeda Atsushi、Yamada Shin-ichi、Noguchi Makoto
  • 雑誌名: Cureus 巻: 15 ページ: e49198
  • DOI: 10.7759/cureus.49198
  • 査読あり
• [学会発表] Vascularized scapula bone graft using angular branch in maxillofacial reconstruction (2023)
  • 著者名/発表者名: Imaue S, Tomihara K, Yamada S, Ikeda A, Tachinami H, Sakurai K, Takaichi M*, Ishizaka R*, Fujiwara K, Noguchi M
  • 学会等名: 13th Joint Scientific Meeting of NAOMS and JSOMS
• [学会発表] Applications of the hyperdried human amniotic membrane in oral surgery (2023)
  • 著者名/発表者名: Tachinami H, Arai N, Tsuno H, Fujiwara K, Imaue S, Kurohara K, Yamada S, Tomihara K, Noguchi M
  • 学会等名: 2nd Japanese-German CMF Symposium
• [学会発表] Rapamycin induces phenotypic alterations of oral cancer cells that facilitate antitumor T cell response (2023)
  • 著者名/発表者名: Yonesi Amrimoezz, 冨原 圭, 高塚 団貴, 立浪 秀剛, 山崎 学, 高市 真由, Younesi Amirreza, 山田 慎一, 田沼 順一, 野口 誠
  • 学会等名: 第77回NPO法人日本口腔科学会学術集会
• [学会発表] 超選択的動注化学放射線療法後にニボルマブが奏功した局所進行下顎歯肉癌の1例 (2023)
  • 著者名/発表者名: 立浪秀剛, 今上修一, 石戸克尚, 山田慎一, 野口 誠
  • 学会等名: 第77回NPO法人日本口腔科学会学術集会
• [学会発表] ニボルマブによる完全奏功後，2年未満で投与終了となり再発した舌癌の1例 (2023)
  • 著者名/発表者名: 石坂理紗, 立浪秀剛, 今上修一, 石戸克尚, 池田篤司, 高塚団貴, 櫻井航太郎, 山田慎一, 野口 誠
  • 学会等名: 第49回日本口腔外科学会北日本支部学術集会
• [学会発表] Pembrolizumabを投与した再発・転移口腔癌の治療成績 (2023)
  • 著者名/発表者名: 櫻井 航太郎, 山田慎一, 今上修一, 池田篤司, 立浪秀剛, 野口 誠
  • 学会等名: 第48回公益社団法人日本口腔外科学会中部支部学術集会
• [学会発表] 肩甲骨皮弁採取における肩甲下動脈を標的とした術前3D CT angiographyの有用性 (2023)
  • 著者名/発表者名: 今上修一, 石戸克尚, 高市真由, 藤原久美子, 冨原 圭, 立浪秀剛, 櫻井航太郎, 池田篤司, 山田慎一, 野口 誠
  • 学会等名: 第66回NPO法人日本口腔科学会中部地方会
• [学会発表] 癌化学療法の口腔粘膜炎治療の基礎的研究 (2023)
  • 著者名/発表者名: 山口百々穂, 立浪秀剛, 高塚団貴, 高市真由, 冨原 圭, 山田慎一, 野口 誠
  • 学会等名: 第68回公益社団法人日本口腔外科学会総会・学術大会
• [学会発表] 口腔癌におけるPAK4阻害による免疫学的修飾作用 (2023)
  • 著者名/発表者名: 高塚団貴*, 立浪秀剛, 櫻井航太郎, 高市真由*, 冨原 圭, 山田慎一, 野口 誠
  • 学会等名: 第68回公益社団法人日本口腔外科学会総会・学術大会