口唇口蓋裂の発症には様々な要因が関与することが知られているが、とりわけ口蓋突起上皮の動態異常が口蓋裂の発症と大きく関わっている。申請者は口蓋突起上皮のライブイメージング技術により、口蓋突起癒合時の上皮細胞の細胞動態を観察することを可能にしている。本研究はこの技術を応用することで、TGF-β/Rasシグナル経路が口蓋突起癒合における細胞動態にどのような影響を及ぼしているかを解明し、Rasシグナル経路を制御するための標的分子を探索する新しい取り組みである。 Ras阻害剤投与群において上記のライブイメージングにより二次口蓋の上皮除去が阻害されることを見出した。静置培養でも同様にRas阻害剤投与群では口蓋突起癒合が抑制され、E-cadherinおよびp63が口蓋癒合面の内側縁上皮に強発現していた。また、Rasシグナルの下流分子であるRREB1に着目し、Rreb1遺伝子は口蓋癒合面の内側縁上皮に特異的に発現し、Rreb1ノックダウン群では口蓋突起癒合が抑制された。これによりRasシグナルおよびRreb1遺伝子が口蓋突起癒合に重要な因子であることを見出した。また、この研究内容を共同執筆者としてDisease Models & Mechanisms 誌に投稿した。 、Rasシグナルの標的分子であるRREB1を用いた上述の実験系を確立したことにより、口蓋突起癒合不全に特異性の高いTGF-β/Rasシグナル分子標的治療法の構築を進めていく予定である。
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