研究課題
本邦は急速に高齢化が進み、寝たきりの高齢者が増加傾向にある。将来的な寝たきりを予防し、高齢者の運動耐容能を保持し、健康長寿を実現することが時代の急務と言える。実に、65 歳以上の高齢者の約3割がサルコペニアに陥っている。その対策として、十分な蛋白質摂取の上で筋肉量を増やし、筋力や身体能力を改善するためのレジスタンス運動と低強度の有酸素運動が効果的であると考えられている。一方、高強度インターバル運動訓練療法の運動耐容能改善効果が高いことは、すでに数多くの臨床研究で実証されている。しかしながら、高強度インターバル運動訓練療法の高齢者サルコペニア集団での運動耐容能改善効果については、十分検証された報告はまだない。よって、本研究の目的は、高齢者集団における高強度インターバル運動訓練療法の運動耐容能改善効果を明らかにすることである。究極的には、高齢者の寝たきりを予防できる治療法として樹立することを目標に置いた。患者リクルートのスクリーニングの過程で、高齢者集団は大動脈弁狭窄症を有していることが解った。経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI)を行い、治療を行っている高齢大動脈弁狭窄症患者もいれば、ADL低下や認知症などの理由で、TAVIをも行えていない高齢者も少なからず多く存在することが解った。また、これまで報告されている以上の割合の高齢者がサルコペニアに陥っていることが判明し、骨格筋力、骨格筋量が低下しているためにフレイルになっていることが解った。同時に、腎機能低下を合併した高齢者も多く、腎保護のために蛋白摂取制限を行う必要がある。高強度インターバル運動トレーニングを実践するにあたり必要な装着式心拍数モニターや装置の選定は終わり、100名ほどのプレスクリーニングを実施した。2024年度も引き続きリクルートを行い研究を遂行していく方針である。
2: おおむね順調に進展している
(1)COVID-19流行期に伴い被験者リクルートメントの難航本研究を実施するにあたり、開始後すぐに研究を始められるように環境整備を整えた。しかしながら、COVID-19の流行に伴い部外者の大学敷地内への立ち入りが禁止されるようになってしまい、被験者募集のリクルートメントを実施することが全く出来ない期間があった。特に、オミクロン株流行期は、外部からの出入りが厳格に禁止されたこともあり、予定の通りリクルートメントが進まなかった。また、COVID-19流行期に、感染のリスクを理解した上で、本研究のために大学病院へ出向きボランティアとなることを希望する被験者が極端に少なかったため、予定通りの被験者リクルートメントが出来なかった。(2)COVID-19流行期に伴う心肺運動負荷試験実施中止による影響本研究は、心肺運動負荷試験における運動耐容能(peakVO2)を中心に、呼吸機能検査、6分間歩行距離、歩行速度、握力、大腿筋筋力(膝伸展最大張力)、身体組成(体重、BMI、除脂肪体重、骨格筋量、腹部内臓脂肪量)、安静時および運動負荷時の心エコー図検査(左室容積、収縮特性指標、拡張特性指標など)、呼吸機能検査を実施するものであった。オミクロン株流行期は、感染防御の観点から心肺運動負荷試験や運動負荷心エコーの実施をやむを得ず休止せざるを得ない時期があったため、(1)と合わせて被験者リクルートメントが困難であった。現在、感染症5類となり、環境が大きく変化したため、早急にリクルートメントを行うためのプレスクリーニングを数100名終え、本格的なRCTが実施可能となっている。本年度中に介入まで行いすべてのデータを取得できる見込みである。
大学病院ではなく、大学関連病院でもリクルート紹介のための研究会、会議を複数回実施し、今後も同様に実施予定としている。プレスクリーニングリストがあるため、おおむね順調に進行していく予定である。
コスト意識をもって物品購入をしたため、予想よりも少ない金額で実験機材を購入できた。次年度はこれを利用して、さらなる学会発表、論文発表を行っていきたい。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)
Journal of American Heart Association
巻: 12 ページ: e031399
10.1161/JAHA.123.031399.
JACC: Heart Failure
巻: 11 ページ: 760-771
10.1016/j.jchf.2023.02.006
Geriatrics & Gerontology International
巻: 25 ページ: 255-256
10.1111/ggi.14545.