研究課題
本研究課題の目的は,財や仕事を複数人で公平に分けるという公平分割問題のアルゴリズム設計と解析である.公平分割問題は,資源や仕事の配分といった場面で現れる実用上も重要な問題である.2023年度は,補助金を用いた公平割当の研究も行った.ここでは,公平さの基準として「無羨望性」に着目する.エージェントに不可分なアイテムを割り当てる状況において,誰も他のエージェントに羨望をもたないよう割り当てたいが,例えば財の個数が人数より少ないときなどは羨望をもつエージェントが出ることを避けられない.羨望が生じない状態を達成するための対応策のひとつに,羨望をもつエージェントに「補助金」で補填することが挙げられる.補填に使う補助金額は少ないほうが望ましいため,必要になる補助金額の評価,および出来るだけ少ない額を使う無羨望割当を求めるアルゴリズムの構築が問題になる.必要な補助金額はエージェントの効用関数に依存し,既存研究では特に効用関数が単調な場合の必要補助金額の上界は知られていた.本研究では,単調関数より広い効用関数のクラスに対して必要補助金額の上界を与え,さらに単調関数に対する上界を改善した.また,実際にその上界を満たす無羨望割当を与えるアルゴリズムも構築した.この成果は国際会議AAAI-24で発表済みである.他にも,公平割当を動機とした凸関数最小化問題に関する研究にも取り組み,国際会議で発表予定(採択)である.また,実用上は財や効用の情報が厳密には分からないことも多々ある.アイテムに対する価値の扱いが以前の研究と異なる設定のオンライン公平割当問題に関する検討も進めている.
2: おおむね順調に進展している
公平割当に関する研究成果を得られており,研究計画として取り上げたオンライン公平割当問題に対する新たな課題の検討を進めているため.
引き続き,新たな設定でのオンライン公平割当問題に関する検討を進める.より具体的には,検討している設定に近い問題であるバンディット問題の技術を取り入れながら,アルゴリズムの設計・解析を行う.
新型コロナの影響で2022年度までに生じた繰越額があり,かつ参加を計画していた国際会議に参加できなかった.2024年度は,研究を円滑に進めるための物品の購入やオンラインサービスの利用に充てつつ,国内学会・国際会議に積極的に参加し情報収集も行う.
すべて 2024 2023
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件)
Games and Economic Behavior
巻: 144 ページ: 49-70
10.1016/j.geb.2023.12.006
Proceedings of the 51st EATCS International Colloquium on Automata, Languages, and Programming
巻: - ページ: to appear
Proceedings of the 38th AAAI Conference on Artificial Intelligence
巻: - ページ: 9824-9831
Algorithmica
巻: 86 ページ: 566-584
10.1007/s00453-023-01175-3