研究課題/領域番号 |
21K17879
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大西 雄二 京都大学, 生態学研究センター, 特別研究員(PD) (10847677)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 核酸 / 安定同位体 / リン / 琵琶湖 / 底生動物 |
研究実績の概要 |
本年度は、生物サンプルのリン濃度を測定するために湿式酸化法を改良した。その結果、1mgの試料量でリン濃度を測定できる新たな測定手法の開発に成功した。この成果はAnalytical Science誌に掲載された。 本年度は培養した脱窒菌を用いて安定同位体比測定のための核酸抽出方法を検討した。従来の抽出方法では高濃度の酢酸ナトリウムを用いるため、炭素同位体比測定には適さなかった。代替するために塩化ナトリウムを用いて様々な条件で抽出を試みたが、いずれの条件でも核酸の沈殿が生じず、炭素同位体比測定に関しては断念せざるを得なかった。しかし、窒素同位体比の測定は行うことができることが明らかとなった。 計画を前倒しで、琵琶湖深底部の底生動物群集を対象とした安定同位体生態学的研究を行った。核酸の同位体比を得ることが難しかったので、硫黄同位体比を用いることに変更した。その結果、琵琶湖堆積物中の高濃度に蓄積した硫化物の存在と、その硫化物の生成・消費に関わる微生物活動が示された。また、琵琶湖深底部の底生動物にとって表層の植物プランクトンの沈降粒子だけでなく、堆積物中で活動する微生物に由来する有機物も重要な栄養源となっていることも明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目的の一つであるリン測定法の開発に成功し、学術誌に掲載することができた。培養実験に関しては、当初の計画通りの作業を行うことができたが、期待した通りの成果は得られなかった。その代わりに計画を前倒しして琵琶湖の野外調査を行い、十分な成果を得ることができた。以上を鑑みて、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、培養実験をさらに進める。本年度に微生物の核酸窒素同位体比の測定を行うことが可能となったので、例えば、基質の窒素同位体比を数段階に変化させたり、酸素分圧を変化させるなど、条件を変えた様々な培養系を用意する。これら複数の系で培養した脱窒菌から核酸を抽出し、窒素安定同位体比測定を行う。この結果から核酸や菌体の窒素同位体比がどのような生物代謝で決定されているかを明らかにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度はCOVID-19感染拡大のため、国内移動が大きく制限されたことや、学会・シンポジウムが完全にオンライン化したことによって旅費や交通費の使用額が当初計上していたものよりも大幅に減少した。また、COVID-19感染拡大の影響によってテレワークを行わざるを得ない状況になったことで、分析の消耗品などの購入量も減少した。
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