研究実績の概要 |
プラスチック廃棄物の光分解により、海洋環境中にマイクロプラスチック(MPs)が生成される。プラスチックは多環芳香族炭化水素(PAHs)などの疎水性有機汚染物質を吸着し、長距離輸送することができる。長距離輸送される。しかし、吸着した汚染物質が光分解に与える影響については不明な点が多い。本課題は、MPsに吸着したPAHsが光分解すること、また吸着したPAHsが光触媒として働き、ポリエチレンの光分解を促進することを示した。光照射により、PAH吸着ポリエチレンシートの着色と表面分解が、それぞれSEMとFTIRによって観察された。PAHを吸着したポリエチレンシートは、光に対する耐性が低いことが示された。さらに、フルオレン、フェナントレン、アントラセン,ベンゾ[a]アントラセン,ベンゾ[a]ピレン,インデノ[1,2,3-cd]ペリレンは、ポリエチレンMPに吸着させた場合、水相よりも低い光分解率を示した。これらの結果はPAHsは光触媒として働区ことを示した。 MPsとPAHsの相互作用は、海洋環境に2つの悪影響を及ぼす可能性がある。第一に、PAHsの光触媒作用によってプラスチック廃棄物の光分解が促進され、MPsの生成が増加する。第二に、PAHの寿命が延びるため、海洋環境におけるPAHs汚染が促進される。一部のPAHsは発がん性があるため、PAHsの環境中における長寿命化は深刻な問題となる可能性がある。 本研究は、プラスチックとPAHsの相互作用が、海洋環境におけるMPs汚染とPAHs汚染を増悪する可能性を示した。今後のMPs関連研究は、PAHsのように光触媒作用を示す汚染物質を調査し、そのMPs生成促進機構や影響の全容を把握する必要がある。
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