研究課題/領域番号 |
21K17953
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
滕 媛媛 東北大学, 東北アジア研究センター, 助教 (40793716)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 中国 / 都市化 / 失地農民 / 居住 / 社会的統合 / 都市開発 / 格差 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、中国における都市開発で土地を失い都市に再定住させられた元農民(失地農民)およびその第二世代の社会経済的統合状況と、それに影響を与える要因を明らかにすることである。具体的には、南昌市の新市区を研究対象地域とし、質問紙調査とインタビュー調査を用いて、①失地農民第一世代の所得や就労などの状況とその影響要因(課題①)、②失地農民第二世代の教育達成および就労の状況とその影響要因(課題②)、③失地農民世帯と従来の都市住民世帯間における格差の状況(課題③)を明らかにする。この3つの課題を解明したうえで、中国の都市-農村二重社会構造が農民に与える長期的影響について考察を行う。 研究1年目の本年度は、質問紙調査の設計・実施、および、課題①失地農民(第一世代)の社会経済的統合状況に関する分析を予定していた。2022年1月に調査地である南昌市の新市区で失地農民および一般住民を対象に、「紅谷灘新区住民の就業・居住・社会的統合に関する調査」というタイトルの質問紙調査(暫定有効回答数:548)を実施した。調査内容は、主に個人・世帯の基本属性、就労状況、教育観念・子どもの学歴および職業、居住状況、社会的統合などからなる。3月に調査データの入力・クリーニングがほぼ完了した。このほか、失地農民および関係者(街道弁事処、社区住民委員会、村民委員会、失地農民再定住団地にある小学校の教員など)に対するインタビュー調査も実施した。 調査の結果、失地農民は都市部で10年以上生活しているにもかかわらず、彼ら彼女らとほかの住民との間の社会経済的状況(世帯所得や就労状況など)における格差は縮小していなかったことがわかった。また、失地農民の社会経済的統合とその居住状況との関連性に関する分析も行った。令和4年度は、引き続き失地農民の社会経済的統合状況の影響要因を分析する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍の影響を受けて調査地への渡航が予定より若干遅れたが、2022年1月-2月に現地調査を行うことができた。当初の計画通り、南昌市の新市区で失地農民世帯および従来の都市住民世帯を対象とする質問紙調査の実施ができた。3月に調査データの入力・クリーニングがほぼ完了し、予定していた分析を開始した。また、今後の新型コロナの拡大により中国における現地調査が困難になる懸念があるため、令和4年度に予定していたインタビュー調査の一部を前倒しにして実施した。以上の内容から、本研究の進捗状況についてはおおむね順調に進展していると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
令和4年度は、前掲した課題①と課題②の解明に取り組む予定である。課題①に関しては、引き続き令和3年度に実施した質問紙調査のデータを用いて解析を行い、失地農民第一世代の社会経済的統合の影響要因を解明する。また、分析結果をまとめ、論文作成を行う。課題②に関しては、質問紙調査のデータのほかに、学歴や職業的地位が異なる第二世代をもつ失地農民世帯に対してインタビュー調査を実施することで、失地農民第二世代の教育達成や就労の状況、および、その影響要因について分析する。なお、新型コロナの影響で現地への渡航が難しい場合、調査方法の変更を検討し、研究を遂行していく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度の予算はおおむね当初の計画通りに執行できた。しかし、一部、計算が不十分であったため、端数(2万2519円)が発生してしまった。この端数を次年度使用額に計上し、請求した助成金と合わせて来年度の現地調査費用に使用する予定である。
|