研究課題/領域番号 |
21K17958
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
櫻田 智恵 名古屋大学, 人文学研究科, 学振特別研究員(RPD) (90808304)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 君主制 / タイ / 東南アジア / イメージ戦略 / 女官 / 側室 / ネットワーク |
研究実績の概要 |
本研究は、前タイ国王プーミポン(在位1946~2016年)の絶大な権威を支えた「人的ネットワーク」の実態を、前国王の祖母であるサンワーンワッタナーをはじめとする側室らとその女官に焦点をあて、彼女らの姻戚・交友関係から解明するものである。 当該年度は、ラーマ5世の側室と女官らに関し、一覧化と基本情報の整理を行うことを最優先課題として行った。新型コロナウイルスの影響で、自らがタイで資料調査することは困難であったが、京都大学東南アジア研究所やアジア経済研究所、国会図書館、東京大学アジア研究図書館等に所蔵されている資料の調査を行い、関係者の葬式本を収集し、それを基に人物相関図の作成を行った。これを分析する際には、90名を超えるラーマ5世の側室について、宮中に残ったもの(側室として)、宮中に残って女官になったもの、実家などの親族を頼って宮中外に出て居住地を確保したもの、などに分類して調査を行った。 ここから、宮中外に居住地を確保した者については、その地元で名士的な役割を果たしたものも多いことがわかり、今後はさらに彼女らの動向を詳しく調査することとした。また、宮中に残って女官になったものの中には、プーミポン国王らにかなり近しい存在となった者も含まれるため、彼女らについてもその閨閥や交友関係について調査を進めている。 これらの研究成果の一部は、8月にオンラインで行われたICAS12(The 12th International Convention of Asia Scholars)等で報告した他、現在執筆中の単著などで発表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスの影響で、今年度も現地での資料調査、及び聞き取り調査を行うことができなかったためである。インタビュイーの多くが高齢で、オンラインでの聞き取り調査が困難であること、入院や逝去などによって、インタビュイーの変更を余儀なくされたことで、当初の計画を変更し、別のインタビュイーとの諸連絡を行うなどしたため、少々遅れが生じた。 しかしながら、本研究の基盤となる、人物相関図の作成が当初の予定よりもすすんでいるため、新たなインタビュイーの選定等も順調であり、次年度にこの遅れを取り戻すことができると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、側室とその女官らの関係図の作成を引き続き進めるとと共に、バンコクにおいて女官経験者等、宮中での勤務経験を有する人物らに聞き取り調査を行う。加えて、宮中外に居住地を構えた側室らについて、地籍図情報等をデータ化し、分析する作業を行う。 これと並行し、女官らが姻戚関係を結んでいる経済界の人物や会社について、社史や葬式本を収集し、王室との関係性などについて分析をすすめる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本科研に関する書籍を発行するために一部を使用する予定であったが、書籍の発行が延期となったため、当該年度に使用しなかった。また、タイでの現地調査に主に使用予定であったが、新型コロナウイルスの影響により現地調査が困難であり、使用は次年度に持ち越しとした。
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