研究課題/領域番号 |
21K18228
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
近藤 直 京都大学, 農学研究科, 教授 (20183353)
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研究分担者 |
小川 雄一 京都大学, 農学研究科, 准教授 (20373285)
鈴木 哲仁 京都大学, 農学研究科, 助教 (00723115)
白神 慧一郎 京都大学, 農学研究科, 助教 (80795021)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 鶏卵 / レーザー / 雌雄判定 / 散乱 / 非破壊検査 |
研究実績の概要 |
本研究はこれまで黙認されてきた孵化直後の採卵鶏雄雛の70億羽殺処分という人類が抱える大きな未解決課題の解決を目的としている。そのため,従来の透過分光だけでなく,微小な蛍光計測技術やレーザースペックル技術を活用した高度な非破壊計測技術を組み合わせた手法によって情報収集することを目指している。今年度は,卵黄濃度がPseudomonas fluorescensの増殖と蛍光特性変化に与える影響を調査した結果,含水率が高いほど,蛍光強度が強くなる傾向を確認した。また,試験区内の菌の増減とは反対に蛍光強度の増減が確認されたことから,本菌の鶏卵における蛍光特性変化には,菌数よりも溶液環境の含水率や卵黄濃度が影響を与えることが分かった。この結果は,親鳥の日齢や貯卵条件で蛍光特性が大きく変化し,腐敗卵の検出感度の低下を引き起こす可能性を示唆しているが,各鶏卵の含水率や卵黄濃度の非破壊計測や,産卵および貯卵条件を正確に管理すれば高感度な検出が期待できる。同時に,卵殻の光透過特性についても詳細に調べた。その結果,短波長になるにつれて光透過性が低くなる理由は,主に散乱に由来している事が分かった。また,400 nm付近では若鶏に比べて老鶏の卵殻の方が高い光透過性を示すことが明らかになった。卵殻の光透過性の観点では,卵殻による吸収波長さえ避ければ波長の長い光を用いることで鶏卵内部をより高精度に観測することができると考えられる。具体的には,500 nmより長波長側では散乱に起因する光学密度の傾きが穏やかであり,吸収ピークに由来する光学密度の変化の方が大きいと予想されることから,鶏卵の早期雌雄判別を行ううえでは血液の吸収波長である500~600 nm帯が最適であるとの結論を得た。これらの知見を踏まえて532nmのレーザーでスペックル画像の取得を試み,現在データ解析を行っている段階にある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
測定系の構築が完了しており,データを収集できる段階にあるため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は,血管形成が見やすい緑色の照明光を用いて孵卵過程の蛍光画像を取得し,機械学習による解析を試みる。合わせて,スペックル画像による初期胚の心拍モニタリングの実験を成功させ,蛍光画像による評価方法との比較を行うことでその有用性や問題点の抽出をする。最終年度となるため,論文化を進めるとともに,本課題を総括する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナの影響で当初予定していた旅費を消化できなかったため使用額に差が生じたが,本年度はその予算を高感度計測のための検出技術の改良に充当し,実験の精度を向上させる。
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