研究課題/領域番号 |
21K18321
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
浅野 竜太郎 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80323103)
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研究分担者 |
田中 良和 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (20374225)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2025-03-31
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キーワード | フラボシトクロムb2 / シトクロム c / 直接電子移動 / クライオ電子顕微鏡解析 |
研究実績の概要 |
本研究は、汎用的な血中バイオマーカーの連続計測を可能とする酵素―電極間直接電子移動 (Direct Electron Transfer, DET) 制御型センサの開発を目的としている。具体的には、電極へのDET能を有するフラボシトクロムb2 (Fcb2)-シトクロム c (Cyt c) にそれぞれ抗体断片を融合させ、バイオマーカー依存的なDET効率の変化を測定原理とするセンサの開発を目指している。 本年度は、主に1) Fcb2の改変による熱安定性の向上、と2) Fcb2とCyt cのクライオ電子顕微鏡を用いた構造解析、の観点から研究を進めた。 1) Fcb2の改変による熱安定性の向上 ジスルフィド結合の導入による熱安定性の向上に向けて、モデル構造を基に、システインへの変異導入個所を複数選定した。複数の変異体を設計し、それぞれ発現ベクターを作製し、大腸菌を用いた組換え発現を行った。いずれも菌体破砕上清に酵素活性が認められたため、今後安定性評価へと進める予定である。また、精製のためのタグを融合させたFcb2の調製も並行して進めた。結果、興味深いことに酵素活性と安定性の向上が認められた。今後より詳細な評価を行う予定である。 2) Fcb2とCyt cのクライオ電子顕微鏡を用いた構造解析 バイオマーカー依存的なDET効率の変化を測定原理とする新規センサの開発にはFcb2とCyt cの相互作用部位の特定が重要である。それぞれ大腸菌発現系を用いて調製したFcb2とCyt cを量論的に混合させた後、クライオ電子顕微鏡解析を行った。Fcb2とCyt cの相互作用部位の特定には至っていないが、特にFcb2に関して良好な観察像が得られており、今後より詳細な条件検討を行うことで、精密構造が得られる可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、1) Fcb2の改変による熱安定性の向上、に向けてジスルフィド結合の導入検討を行った。酵素活性は認められているため、今後の解析に期待が持たれると共に、精製のためのタグを融合させたFcb2には、酵素活性と安定性の向上が認められた。一方、2) Fcb2とCyt cのクライオ電子顕微鏡を用いた構造解析、に関しては、Fcb2とCyt cの相互作用部位の特定には至っていないが、特にFcb2に関して良好な観察像が得られており、今後より詳細な条件検討を行うことで、精密構造が得られる可能性が示された。以上、研究の進捗を総合的に判断し、おおむね順調に進展している、とした。
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今後の研究の推進方策 |
バイオマーカー依存的なDET効率の変化を測定原理とする新規センサの開発に向けて、今後は現在進めている、1) Fcb2の改変による熱安定性の向上、と2) Fcb2とCyt cのクライオ電子顕微鏡を用いた構造解析、に加えて、3) Fcb2とCyt cの共固定化条件の最適化、と4) 構造情報に基づくFcb2とCyt cへの抗体断片の融合、を進める予定であり、それぞれ既に予備検討は進めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
熱安定性の向上に向けたFcb2の改変とクライオ電子顕微鏡解析に向けたFcb2とCyt cの大腸菌を用いた調製に際して、当初予定以上に進行したため、予定していた実験回数を下回り、その分の消耗品および人件費の計上が不要となり次年度使用額が生じた。今後の大量調製、および網羅的なクライオ電子顕微鏡解析に向けて、係る消耗品および人件費に主に充当する予定である。
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