研究課題/領域番号 |
21K18337
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
葉柳 和則 長崎大学, 多文化社会学部, 教授 (70332856)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2025-03-31
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キーワード | 近現代ヨーロッパ史 / 近現代ヨーロッパ文化 / 近現代ヨーロッパ政治 / 文化政策 |
研究実績の概要 |
R5年度の研究実績の1つは、戦後スイスを代表する作家・知識人マックス・フリッシュの講演『よそもの過剰』(1965/66)の翻訳原稿の細部をブラッシュアップ、および訳語についての詳細な脚注の執筆である。日本ではほとんど知られていないスイス固有の政治制度や文化的背景についての調査に基づく脚注があって初めて、『よそもの過剰』は他国において理解可能なテクストとなる。翻訳書はR6年度中に刊行予定である。 もう1つの研究実績は、スイスにおける「よそもの過剰」関連の資料調査である。調査は2023年に9月6日から23日の期間、スイス文学アーカイブ(ベルン)、ルツェルン市アーカイブ(ルツェルン)、チューリヒ州中央図書館(チューリヒ)で実施した。力点を置いたのは、1930年代のスイスにおける「よそもの排除」の言説形成に大きな影響を及ぼした劇作家マックス・エデュワルト・リーブルクの思想的言説関連資料の収集である。 2023年9月25日に、神戸大学で開催された国際会議INTERFACEing 2023 “Changing Paradigms: Humanities in the Age of Crisis”にて。パネルImages of the Alps and “the National”を立て、モデレーターとして司会を担当するとともに、研究報告を行った。 R5年度の研究成果は。査読付き英文ジャーナルPsychologiaの第65巻5号(2023年12月)に掲載された、「よそもの排除」の文化運動、精神的国土防衛の主唱者フィリップ・エッターの講演の定量的分析をもとにした論文である・
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究期間開始時がコロナウイルス禍と重なっていたため、スイスでの資料調査が困難となり、当初の計画からすれば、10ヶ月程度、研究成果の発表が遅れている。2023年度中に、遅れを取り戻すことを試みたが、十分とは言いがたかった。しかし、翻訳原稿のブラッシュアップ、国際学会での発表、英文査読ジャーナルへの投稿・掲載に見られるように、研究は進展している。しかし、研究機関初年度に生じた調査への制限の影響を全面的に克服するには至らず、2024年度に予算の繰越しを行った。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、翻訳『よそもの過剰』の訳文と脚注のの最終ブラッシュアップ、収録する論考「マックス・フリッシュと他者」の執筆を経て、書籍を刊行する。主としてエッターの講演における聴衆の感情への訴えかけに焦点を当てたセンチメント分析を。国際学会INTERFACEing 2024(台北)で口頭発表する。発表に基づく論文の国際ジャーナルへの投稿を実施する。口頭発表での議論を踏まえて、国際欧文ジャーナルInterface: Journal of European Languages and Literatureに英語論文を投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の初年度がコロナ禍のただ中であったため、スイスでの資料調査を実施することができなかった。2年目以降、研究を加速することで、当初の計画に近づけることを目指したが、十分ではなかった。そのため次年度に予算を繰越すこととなった。今年度にスイスでの補足調査を行い、それに基づいて研究発表を行うことで、当初の研究目的を達成する。
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