研究実績の概要 |
2023年度は、家森信善・上山仁恵「「ファイナンシャル・プランニングに関する金融機関職員の意識調査」の結果概要」(神戸大学経済経営研究所 Discussion Paper Series, DP-2023-J07 2023年9月)を発表している。 本格的な高齢社会にある日本において、判断能力が低下する高齢者が増えることが予想されており、的確にサポートをする助言者の役割が特に重要になるものと思われる。金融機関の利害から完全に独立した助言者の重要性はもちろんであるが、少なくとも当面は、金融機関職員が大きな役割を果たす必要がある。そこで、われわれは、2023年6~7月に、20歳以上49歳の若手・中堅の預金取扱金融機関職員1,000人に対してファイナンシャル・プランニングに関する意識調査を実施した。 専門性の観点で、保有する資格を尋ねたところ、個人営業を主としている金融機関職員でもFP資格を持たない人が2割弱おり、彼らは個人に対して十分な情報を提供できる基礎的な知識を持たない可能性があり、さらに、約3割は研修・研鑽が十分ではないとみている。金融機関には人材育成が求められている。 「お客様からローンの相談があったときには、返済能力だけではなく、将来の生活設計についても積極的に確認すべきである」について賛同する人が8割を超えており、踏み込んだ対応姿勢が見られる。一方で、「貴社の窓口で資産運用について相談を希望する高齢者が増えている」や「資産運用以外の生活について、貴社に相談を希望する高齢者が増えている」とする回答者が約半数であった。金融問題はもちろんのこと、その他のことでも、金融機関が高齢者の相談先となっていることが確認できる。一方で、「高齢者の認知症に伴う顧客とのトラブルが増えている」という回答者は7割近くあり、この種の問題が金融機関の現場で広く発生していることがわかる。
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