研究課題/領域番号 |
21K18456
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
香坂 玲 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (50509338)
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研究分担者 |
出口 茂 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋機能利用部門(生命理工学センター), センター長 (40344296)
立川 雅司 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (40356324)
松岡 光 国立研究開発法人理化学研究所, 革新知能統合研究センター, 研究員 (70750016)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 人新世 / フードテック / 培養肉 / 代替肉 / 昆虫食 / 風土 / 質 |
研究実績の概要 |
急速に実装と普及が進む新たな食と環境のバランス、その相克について世代・国・社会層に関する対話と、倫理までを射程にいれた探索的な研究として、初年度はオンラインにおける活動を中心に実施した。課題の萌芽・実践的な特性から、論文・寄稿に加え、特設のホームページの設置、報道におけるコメント・動画の配信を行ない、世代間、国際的対話に寄与した。具体的には、合計3回(うち2回は国際を含む)のセミナーをハイブリッドを含むオンライン形式で実施した。2021年9月にはオンラインの研究会「人新世と人口減少社会における環境負荷の少ない食についての研究会」を開催し、分子料理を専門とするアイルランドの研究者によるオンラインの講演、意見交換を行った。10月にセミナー「国際ウェビナー:フードテックの世界にテロワールはあり得るのか 自然と人工物がまざる時代 人新世における食文化」を開催、分子料理の教育、ネットワーキングについてアイルランド及び、フランスの研究者がそれぞれオンラインにて講演、意見交換を行った。2022年1月には、ハイブリッドセミナー「人新世における食文化の形成プロセス ファインシンター社のコオロギ焙煎、粉末加工技術から」を開催した。環境保全がどこまで動機となりうるのか、また規格・衛生管理等の基準が遵守されなかった場合の業界全体のリスク等にも踏み込み、学術研究、企業、行政と一般の消費者に関連する情報交換が実現された。産学官交流のセミナーとして動画も公開した。学術的な探究、より深化した研究課題として、フードテックに関する制度、言質の国際比較を実施した。植物、培養を活用した「肉」の表示、あるいは肉そのものの表示の定義や論争について、シンガポール、欧州、北米の国々の法制度、業界のガイドライン、関連企業の情報収集を行なった。成果は、上述のセミナーや学術関連の会議にて結果の一部を発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国際動向の把握、民間企業並びに新型コロナウィルスの感染拡大の影響があったため、調査、セミナー、プロジェクト参加者間の打合せは研究活動のほとんどをオンラインで進める結果となった(結果、当初予定していた旅費等についての支出は抑えられているが、移動の可能性を慎重に見極めながら対面での国内外の調査を検討している)。 オンラインの制約はあるものの、結果的に企業への聞取り、レビュー論文の執筆を可能な研究活動として着実に進められ、質を巡る定性データの収集、世代間の相違に関する仮説についての意見交換など、おおむね順調に進めることができた。更にフィードバック、認識の共有については、企業および国際的な研究者とも、ヒアリング・セミナー開催を通じて、行政および企業と交流を行い、本プロジェクトについてのフィードバックも得た。またインタビューをした企業の事業者の環境や「質」を含む定義、議論についても、研究サイドからのインプットができた。このような対話と文献レビューを通じ、フードテックに関わる製品の中でも、分子料理、昆虫由来の製品について訴求される質に相違があることが明らかとなった。このような知見は、フードテックについての制度、言質の国際比較分析の成果として、研究を今後進める上での基礎的知見になる資料であり、今後の社会実装面での発信、学術的成果の資料収集は達成できた。
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今後の研究の推進方策 |
まず8月以降に日本知財学会での特集号を予定しており、国内への海外の情勢を含めた情報の提示を目指している。分析を進めているフードテックの制度分析、関連する商品についての定義・表示、言説の国際比較の成果を取り入れながら、地域性、伝統性、あるいは産業性などの食文化の質に対する意識と、合成食、培養肉、植物肉というフードテックの産品への各世代の受容傾向、環境問題(特に土地利用や気候変動)の課題意識についての調査を実施する。調査手法についてはオンラインを含む質問票調査、ワークショップなど新型コロナウィルスの感染拡大状況を注視しながら、実施可能な方法論を選択する。予定していた現地調査を充実させるために、複数の方法論を組み合わせることも想定する。消費者、専門家の議論による対話型倫理の創出、食文化の変容シナリオをより現実的にするための調査対象地の適切なスケールも検討課題となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの感染拡大の影響を受け、延期中の調査項目が存在している。引き続き、オンラインと現地の調査を併用する形で研究を遂行する予定である。
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備考 |
成果についてはプロジェクトHPにて随時告知
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