研究課題/領域番号 |
21K18504
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
辻 浩 名古屋大学, 教育発達科学研究科, 教授 (00227399)
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研究分担者 |
河野 明日香 名古屋大学, 教育発達科学研究科, 准教授 (10534026)
横山 悦生 名古屋大学, 教育発達科学研究科, 教授 (40210629)
中嶋 哲彦 愛知工業大学, 工学部, 教授 (40221444)
江頭 智宏 名古屋大学, 教育発達科学研究科, 教授 (40403927)
吉川 卓治 名古屋大学, 教育発達科学研究科, 教授 (50230694)
石井 拓児 名古屋大学, 教育発達科学研究科, 教授 (60345874)
小長井 晶子 名古屋大学, 教育発達科学研究科, 助教 (30950927)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 教育福祉 / 学校改革 / 貧困家庭 / 職業教育 / 青年期 |
研究実績の概要 |
本年度は、科研初年度にあたり、各担当ごとで教育福祉に関する基礎的なデータの収集ならびに基礎的な資料の収集といった作業をすすめたほか、「教育福祉」概念をめぐる理論的研究にも取り組んだ。教育福祉と学校教育の関係性を含めた総合的考察に関わる理論的成果としては、石井拓児『学校づくりの概念・思想・戦略-教育における直接責任性原理の探究-』(春風社、2021年12月)、辻浩「『学校から社会への移行期』における教育福祉と学校改革―『総合教育政策』の可能性を求めて―」(『社会教育研究年報』第36号、2022年3月)を刊行・発表することができた。歴史研究・海外研究としては、ドイツ・フランクフルト地方における貧困家庭の病弱児童生徒のための「学校田園寮教育振興協会」の取り組みに関する分析をすすめ、江頭智宏「フランクフルト・アム・マインにおける『学校田園寮教育の振興協会』に関する史的考察」(『教育史研究室年報』第27巻、2022年)を著している。 また、ドイツ・アメリカ・イギリス・日本における職業教育制度の歴史的変遷の比較研究を行っているK・セーレンの研究所を翻訳作業を行い、石原俊時・横山悦生監訳『制度はいかに進化するかーー技能形成の比較政治経済学ーー』(大空社出版、2022年3月)を刊行した。 そのほか、まだ研究論文として発表できていないものの、青年期の教育福祉問題に関わってAsuka Kawano “Local community and youth empowerment: Focusing on community education platform”、石井拓児「コロナ禍でひろがる子ども・青年の貧困・格差とその日本的特質-新自由主義教育改革の転換とその課題・展望-」をそれぞれ国際学会・国内学会において研究発表することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本科研の研究テーマに関わってきわめて重要な鍵的概念となる「教育福祉」をめぐる理論的研究について2つの論稿・著書を刊行することができたことが、まずは大きな研究成果であった(石井拓児『学校づくりの概念・思想・戦略-教育における直接責任性原理の探究-』春風社、2021年12月、辻浩「『学校から社会への移行期』における教育福祉と学校改革―『総合教育政策』の可能性を求めて―」『社会教育研究年報』第36号、2022年3月)。また、また、ドイツ・アメリカ・イギリス・日本における職業教育制度の歴史的変遷の比較研究を行っているK・セーレンの研究所を翻訳作業がすすんだことは(石原俊時・横山悦生監訳『制度はいかに進化するかーー技能形成の比較政治経済学ーー』大空社出版、2022年3月)、今後の教育福祉制度をめぐる国際比較研究をすすめるうえでの重要な手がかりとなるであろう。 また、まだまだごく部分的であるとはいえ、ドイツ・フランクフルト地方における貧困家庭の病弱児童生徒のための「学校田園寮教育振興協会」の取り組みに関する資料の収集と分析(江頭論文)、青年期の貧困問題や教育福祉問題に関する研究成果について学会発表(Kawano、石井)をすすめることができており、今後のさらなる研究成果の積み上げに期待できる。 以上により、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度の研究課題は、教育福祉に関するより多様な問題群を取扱い、それぞれの問題をめぐる歴史的規定性あるいは制度的規定性に関するより深い考察をすすめることにある。具体的には、高齢者の教育福祉の問題や高齢者福祉に依存せざるを得ない引きこもり問題の発生とそのメカニズム(8050問題)、あるいは若年世帯・青年世帯の貧困問題とその結果としての子育て世帯の教育福祉問題(児童虐待対応等)、さらには母子世帯の教育福祉、外国人労働者の教育福祉など大きく拡大しつつある「教育と福祉の間」の問題を取り上げる。 一方、そうした「教育と福祉の間」の拡大と貧困をめぐる今日的な問題を、より歴史的・制度的にとらえ返し、日本における教育福祉事業発生の構造的要因の解明と、教育福祉研究に先駆的に取り組んできた研究者らの思想形成史・理論形成史の探究を重点的にすすめる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、コロナ感染拡大の状況にあり、教育福祉研究に関する国際ネットワークづくりのための海外渡航の計画がほとんど実施できない状況となってしまった。次年度以降に計画していた様々な書籍や資料の収集を前倒して実施したものもあるが、全体としては繰り越さざるを得ない状況となっている。今後、国際ネットワークの形成に関しては、海外渡航の状況が改善しない場合には、ネットワークのためのホームページを作成し、そこで海外の研究拠点との交流を可能とするプラットフォームづくりを計画しているところである。今年度の余剰費用は、次年度以降のそうした研究活動に充てる予定をしている。
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