本研究では、空間反転対称性の破れた磁性体で期待されるマグノンシフト電流を、GHz帯域の磁気共鳴を介して実験的に観測することを目指して研究を行った。具体的な対象物質として、キラル・極性構造を持つ磁性絶縁体であるCu2OSeO3とVOSe2O5を選定し、その磁気共鳴ダイナミクスの詳細を明らかにすることに成功した。また、磁気共鳴を強励起した環境下で電流信号を観測するための測定系の立ち上げを行い、マイクロ波吸収に付随して生じる電流信号を観測することができた。今後は温度依存性の詳細な解析や、理論的に予想される電流波形との比較を行う等のアプローチを通じて、マグノンシフト電流成分の抽出を試みる予定である。
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