前年度まで開発を進めた高速回転可能な液体金属回転駆動系と高周波プラズマ源を設置した真空容器内部において,ラングミュアプローブのイオン飽和電流の揺動計測を引き続き実施し,真空容器外部に設置したソレノイドコイルの電流,すなわち外部印加磁場強度を変化させて,揺動のパワースペクトル密度の計測を実施した.固体金属を回転した場合には,比較的広範な磁場強度範囲で,回転周波数およびその高調波に対応する周波数で揺動が観測された.基本周波数における揺動強度を評価したところ,液体金属を回転した場合には,揺動強度が増加する磁場強度範囲が限定されることが実験的に明らかになり,動的液体金属の不安定性がある磁場強度のみで誘起され,その情報がプラズマ中へと伝搬していることが示唆されたといえる. 以上の結果より本研究では,真空状態を保持した状態において最大3000回転/分の速度で高速回転が可能な駆動系を開発し,動的液体金属とプラズマが接触する実験系を構築することに成功した.さらに密度揺動評価を実施し,外部磁場中の動的液体金属に誘起される揺動が,低気圧プラズマと液体金属の接触面を介してプラズマ中へと伝搬していることが明らかになり,天体現象で観測されるようなパラメータ領域が大きく異なる媒体の接触を室内実験で模擬しうる実験装置を開発した.今後の詳細な揺動評価と物理現象の理解を進める予定である. また,本実験を進める過程で,金属からのスパッタリングによって運動量放出が起こることが明らかとなっており,液体原料を用いた放電維持とスパッタリングによる運動量放出で,小型電気推進機開発が可能になるという着想に至っている.そこで,液体原料を放電維持燃料としたスパッタリング方式電気推進機の開発を進め,安定した推力が得られることを実験的に示した.
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