研究課題
大型ヘリカル装置(LHD)を使用して不純物ダスト粒子ドロッパー装置(IPD)から周辺プラズマ中に各種ダスト粒子を落下させる実験を行った。なお、本年度は磁場を低くすることによって昨年度よりも大きな磁気島を形成した状態で実験を行った。その結果、ダスト粒子落下時にダイバータデタッチメントに遷移する直前の兆候(プラズマ周辺部の炭素イオンの発光強度の増加)を捉える事ができた。ただし、ダイバータデタッチメントに至る過程でプラズマ放電の定常維持が不安定になってしまい、最後は放射崩壊が発生してプラズマが消失してしまう現象が頻発した。この主な原因として過度な量のダスト粒子を落下させたことが考えられる。この他、ダスト粒子の落下率の増加とともに、ダストの溶発位置がトーラス外側に移動するという興味深い現象を観測した。落下率が増加するとともに、プラズマ周辺部の電子温度と密度が上昇していることが分かった。この現象についてダスト輸送シミュレーションコードと周辺ブラズマ輸送コードを連携させて解析したところ、ダストの入射に伴って電子温度と密度が上昇することによって、ダイバータレック部のプラズマ流の効果が大きくなり、それによってダストの溶発位置のトーラス外側へ移動することが分かった。一方、これまでの研究成果(主に大型ヘリカル装置(LHD)プラズマにおけるホウ素ダスト粒子輸送シミュレーションによる解析結果など)を中国の合肥で開催された第19回核融合装置における周辺プラズマ理論に関する国際ワークショップ(PET-19)でポスター発表した。さらに、京都大学の宇治キャンパスにおいて開催された第34回スクレイプオフ層とダイバータに関するITPAトピカルグループ会合に出席して、当該研究分野における最新の情報の収集と主に国内外の研究者との相互交流を推進した。
2: おおむね順調に進展している
昨年度までに整備したステレオ視高速カメラ用のイメージガイドとプラズマ計測用ステレオアダプタを最大限活用することによって、不純物ダスト粒子ドロッパー装置(IPD)から落下した各種ダスト粒子の3次元軌道とその溶発位置を観測できるようになった。引き続き、本年度もこの装置を使用して大型ヘリカル装置(LHD)の周辺プラズマ中に形成された大きな磁気島の中に入射されたダスト粒子の挙動を観測した。現状では、定常的で安定なダイバータデタッチメントの実現には到っていないが、その直前の兆候(プラズマ周辺部の炭素イオンの発光強度の増大)を捉えることができた。また、ダスト粒子の落下率の増加とともにダスト粒子の溶発位置がトーラス外側に移動するという極めて興味深い現象を観測した。ダスト輸送シミュレーションコード(DUSTT)と周辺ブラズマ輸送コード(EMC3-EIRENE)を連携させて解析を行うことによって、この現象を物理的に矛盾なく説明することができた。この新しい解析結果を以下の国内外の会議で発表することができた(いずれもポスター発表)。1st Global Plasma Forum in Aomori Nebuta Museum WA RASSE、7th Asia-Pacific Conference on Plasma Physics 2023、42nd JSST Annual Conference: International Conference on Simulation Technology、19th International Workshop on Plasma Edge Theory in Fusion Devices、第40回 プラズマ・核融合学会 年会以上のことから2023年度における本研究課題の進捗状況を「(2)おおむね順調に進展している」とした。
今後は、不純物粒子ドロッパー装置(IPD)を活用することによって、安定で定常的なダイバータデタッチメントを実現するために、比較的少ない落下量で磁気島中に不純物を生成できるようにする。そのために、最適なダスト粒子の大きさと組成を予め選択して実験を行う予定である。そのために、既存のダスト輸送シミュレーションコード(DUSTT)と周辺ブラズマ輸送コード(EMC3-EIRENE)を連携させた解析をさらに高度化する計画を検討している(例えば、ダスト粒子の大きさ分布を詳細に考慮すること。プラズマ・壁相互作用シミュレーションコード(ERO2.0)との連携計算など...)。2024年度からは、IPDにシリコン粒子が装填できるようになったので、この粒子をプラズマ中に落下させる実験を計画している。シリコン粒子はこれまで使用してきたボロン粒子・炭素粒子等と比較して、重くかつ高価数の不純物であるので、より少ない落下量で大きな放射量を得ることができる。これによって、安定で定常的なダイバータデタッチメントが実現できると期待している。今後は、これまでに得た実験結果と上記のシミュレーションコードを用いた解析結果を整理して、近日中に国内外の著名な学術雑誌に論文を投稿するとともに、国内外の学会で最新の研究成果について発表する予定である。
2023年度で得られた研究成果を2024年度中に開催される当該分野の著名な国際会議に参加して発表するために、次年度にそのために必要となる旅費の一部を繰り越した。
すべて 2024 2023 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 5件、 招待講演 1件) 備考 (3件)
Journal of Advanced Simulation in Science and Engineering
巻: 11 ページ: 12-20
10.15748/jasse.11.12
Contributions to Plasma Physics
巻: e202300105 ページ: 1-8
10.1002/ctpp.202300105
https://nifs-repository.repo.nii.ac.jp/
https://www-lhd.nifs.ac.jp/pub/Science_en/Paper_JASSE11-11220.html
https://www-lhd.nifs.ac.jp/pub/Science_en/Paper_CPP-e202300105.html