研究実績の概要 |
現在スマートフォンのRFフィルタには、バルク弾性波(Bulk Acoustic Wave)を用いたBAWフィルタが用いられており、その耐電力性は1 W程度である。一方、携帯電話基地局のRFフィルタには主に大型の誘電体共振器が用いられており、その耐電力性は数十W必要とされている。しかし近年、高周波化に伴う基地局増設の必要性から、基地局の小型化が求められている。そこで本研究では、将来的にBAWフィルタを基地局のRFフィルタとして利用することを目的とした、BAWフィルタの耐電力性向上に関する提案を行った。分極反転ScAlN多層薄膜を用いれば、BAWフィルタに用いられる圧電薄膜の体積を大きくすることができる。BAWフィルタの主な劣化要因は発熱であることから、圧電薄膜の体積を大きくすれば耐電力性向上が見込めると考えている。本研究では、4層および8層の分極反転ScAlN多層薄膜と単層ScAlN薄膜を作製し、それらの耐電力性を比較した。斜入射RFマグネトロンスパッタ法により、音響ブラッグ反射層上に分極反転ScAlN多層薄膜(1層, 4層, 8層)を作製した。また結晶配向性を評価するためにXRDを用いて極点図測定とχスキャンを行い、断面SEMを撮影することで、分極反転ScAlN多層薄膜のジグザグ配向を確認した。1ポート共振子の耐電力性を評価する自動耐電力試験系をLabviewを用いて構築し、ネットワークアナライザとパワーアンプを用いて作製した分極反転ScAlN薄膜(1層, 4層, 8層)の耐電力性の比較した。層数を増やすにつれて周波数特性が変化を始める印加電力の大きさが大きくなる傾向が見られた。
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