研究課題/領域番号 |
21K18738
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
蟹江 俊仁 北海道大学, 工学研究院, 教授 (10332470)
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研究分担者 |
鄭 好 北海道大学, 工学研究院, 助教 (40775384)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | 永久凍土 / 地球温暖化 / 凍結融解 / 数値シミュレーション |
研究実績の概要 |
地球温暖化の影響は極地において顕在化しやすいことが言われており、近年はその影響と思われる異変が観測されるようになってきている。特に永久凍土の凍結融解サイクルにおける異変が永久凍土地帯の陥没や沈下をもたらすと考えられており、大規模なクレーターの発生・拡大や社会基盤構造物の被害などが報告されている。本研究は、温暖化に起因すると思われる森林火災や異常高温による凍結融解サイクルへの影響を、疑似三次元的なシミュレーションモデルで評価するとともに、現地での計測結果や人工衛星によるInSAR画像分析などから得られる結果と比較検証することにより、現在発生している現象のメカニズムを解明するとともに、その抑止対策や将来への影響を考えようとするものである。 当初の計画に従い、積雪による断熱効果やアルベド変化を考慮したり、融解水分量の地中への浸透も考慮した新しいシミュレーションモデルの開発が進められており、現地計測や衛星観測による結果と比較検証が可能な数か所のエリアを対象に、解析的評価を行った。対象となった箇所は、森林火災の発生箇所、大規模クレータの拡大箇所、社会基盤施設の倒壊箇所などである。これらの解析結果は、観測された沈下量等と比較することで、シミュレーションモデルの妥当性確認に用いられ、満足のいく精度での解析が行われていることが確認された。 これらの研究成果は、国際会議RCOP(Regional Conference on Permafrost:オンライン開催)において発表された。論文名:Mesoscopic-Model Simulation of Freeze and Thaw with Groundwater Flow for Terrain Change in Permafrost Regions
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シミュレーション・モデルの開発は順調に進んでおり、地形変状の発生している場所を対象とした解析結果と、現地の観測結果ならびに衛星画像によるInSAR分析結果との比較検証も順調に進んでいる。 これらに基づき、さらなる精度向上のための工夫も順次進められており、全体として順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究推進方策としては、地形変状の進む地域を対象に、さらなる精度向上のためのモデル改善方策を検討するとともに、融解水の移動を制御することによる地形変形の抑止策等についても研究を進める予定である。 また、今後の継続的な気温上昇や突発的に発生する局所的異常高温が、どのような地形変形をもたらし、既存社会基盤構造物に影響するのかなど、将来予測に関わる解析事例を重ね、永久凍土地帯の近未来の考察につなげていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
使用額に変更が生じた原因は、当初、シベリアなどで予定されていた現地観測や調査が、コロナ禍により実施できなくなったことが大きい。また、国際会議に出席する予定だったものが、オンライン開催になったことも使用額に変更が生じた原因である。 2022年度はコロナ禍による国境を越えた移動が緩和されることが期待できるため、2021年度に行う予定だった調査を実施する予定である。ただし、ウクライナ情勢によりロシア(シベリア)への渡航が厳しい場合は、現地調査の対象地をアラスカに変更することも考えている。
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