研究課題/領域番号 |
21K18755
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研究機関 | 高知工科大学 |
研究代表者 |
佐藤 愼司 高知工科大学, システム工学群, 教授 (90170753)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 海岸ゴミ / プラスチックごみ |
研究実績の概要 |
物部川河口東側の離岸堤背後の砂礫海浜を対象領域とした.海岸堤防から離岸堤までの岸沖約200m,沿岸約300mの漂着ごみが比較的多い領域において,2021年8月末から10月にかけて数回調査を実施した.マルチスペクトルカメラを搭載したUAVを自律飛行させ,海浜の画像を取得した(図-1).マルチスペクトルカメラでは,可視領域から近赤外領域にかけて波長444nm~840nmの範囲の10バンドの反射輝度を記録した.高度40mから約9,000枚のマルチスペクトル画像(地上画素寸法約3cm)を取得した.これらに加え,ごみが集積していた堤防基部と汀線付近を対象に,高度約10mから高解像度のマルチスペクトル画像も取得した. 高精細マルチスペクトル画像に対して,木くず,植生,不透明プラスチック,透明プラスチックの6種類に対するスペクトル特性を分析した.その結果,木くず,植生,不透明プラスチックの領域では輝度の標準偏差σが大きいこと.さらに,植生指標であるNDVIや光の波長に対する輝度増加率aを加えて判定することで,不透明プラスチックの領域を抽出できることが確認できた. 粒径5mm以下のマイクロプラスチックについては,木くずが集積する直下の砂面を目視で精査したところ,数粒のレジンペレットが確認できた. 調査期間中の10月1日に台風16号によるうねりが来襲し,調査地も堤防基部まで波が遡上した.台風前後のUAV調査からごみの分布を比較したところ,木くずの領域は半分以下に減少したのに対し,プラスチックごみの領域は約30%しか減少しなかった.海岸に漂着したプラスチックごみは,海浜全面に波が遡上する状態になっても流出しづらく,堤防基部などへの集積が進むことも確認できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍で現地調査に制限が多かったが,高波浪前後の調査も実施することができ,当該年度の目標はすべて達成できた.2年目は,当初計画通り,ごみ検出の自動化とマイクロプラスチックについての効率的分析手法を検討する予定である.
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今後の研究の推進方策 |
初年度はコロナ禍で現地調査に制限が多かったが,高波浪前後の調査も実施することができ,当該年度の目標はすべて達成できた.2年目は,計画通り,ごみ検出の自動化とマイクロプラスチックについての分析手法を検討する予定である.コロナ感染状況がさらに深刻化した場合には,室内実験による検討に切り替える予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の状況を見ながら調査を実施したが,オミクロン株の急激な感染拡大により,後半に予定していたマイクロプラスチックの効率的な確認手法の検討は,現地での検討を延期し,ワークステーションを用いての画像処理アルゴリズムの検討に置き換えて実施した.検討した処理手法の有効性は現地で確認することが不可欠であるため,この部分は2022年度に実施予定の,ごみ抽出手法の自動化と合わせて検討することとした.そのため,次年度使用額が生じることとなった. 当初計画においては,2022年度は「マルチスペクトル画像処理によるマイクロプラスチックごみの検出」のための現地調査を実施する予定であったが,2021年度後半に室内での予備検討が実施できたため,現地調査が実施可能となれば,2022年度の研究費使用計画に大きな変更はない.コロナ禍の状況がさらに深刻となり,現地調査が実施できない状況になった場合には,画像処理の対象画像を室内実験のものに変更して分析する予定である.
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