研究課題/領域番号 |
21K18755
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研究機関 | 高知工科大学 |
研究代表者 |
佐藤 愼司 高知工科大学, システム工学群, 教授 (90170753)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 海岸ゴミ / プラスチックごみ |
研究実績の概要 |
これまでの研究により,マルチスペクトルカメラを搭載したUAVにより,海岸に漂着したプラスチックごみの分析が可能であることが明らかとなった.一方で,ごみが集積するメカニズムは不明瞭であり,また,UAV調査の解像度では,粒径5mm以下のマイクロプラスチックの調査は困難であるため,これらに焦点をあてた研究を実施した. ごみ集積のメカニズムについては,海洋流れの分布と流れの収束・発散との関係を分析した.気象庁により公開されている海洋流れの流速値を分析し,流れのdivergence, 収束・発散の分布を可視化した.その結果,海岸にごみが集積するとされる離島において,流れが島に当たる地域と島の背後で流れが収束する地域に,ごみが集積しやすいことが確認された.すなわち,海洋流れの収束域にごみが集積し,これが海岸に輸送される地域に漂着することが明らかとなった. マイクロプラスチックの分析では,まず,砂礫海岸でマイクロプラスチックを識別する手法について検討した.プラスチック粒子は砂粒子と区別がつきにくいものの,「逆光」状態では光の透過特性により,両者の区別がつきやすいことがわかった.現地では,ライトを持参して,これを逆光条件となるように照射することにより,確実かつ容易な識別が可能となり,調査効率が格段に向上した.さらに,プラスチック粒子と砂粒子では,比重が異なるため,微風による動揺挙動に違いが生じる.現地調査では,逆光ライトに加えて,ブロワーを併用することにより,比重の違いによる粒子動揺特性の違いも活用するのが極めて有効であることも確認できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍の影響により,現地調査に制限が多かったものの,複数個所の海岸で調査を実施でき,UAV搭載のマルチスペクトルカメラの有効性を確認するなど,当該年度の目標はすべて達成できた.2023年度は最終年度にあたるため,マルチスペクトルカメラのバンドごとの反射特性を高精度化するとともに,海岸に漂着するプラスチックごみの挙動に関する調査・分析を継続する.そのうえで,ごみ削減に向けた具体的な対策を念頭に置きつつ,研究のとりまとめを行う.
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今後の研究の推進方策 |
プラスチック漂着ごみの検出に有効性が確認されたマルチスペクトルカメラに対して,高照度フリッカー光源を用いて,バンドごとの反射率を高精度に推定する手法を検討する.2023年度は最終年度にあたるため,海岸に漂着するプラスチックごみの挙動に関する調査・分析を継続するとともに,ごみ削減の具体的な手法を念頭において,研究のとりまとめを行う. コロナ禍は収束しつつあると見込まれるため,制限が多かった現地調査の頻度を上げる予定である.これまでの調査で,プラスチックごみの挙動を調査できる海岸は複数個所選定できているため,これらの箇所を中心に,UAV搭載マルチスペクトルカメラや照射ライト・ブロワーなどを用いた調査を実施する予定である.また,海洋流れの収束・発散が海岸ごみの集積に重要な指標であることが確認できたため,分析対象の期間と領域を拡大してワークステーションによる海洋流れの数値計算を実施し,結果の妥当性を確認する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響により,現地調査が制限されたため,調査の一部を数値計算による海洋流れの収束・発散場の形成に切り替えた.また,マイクロプラスチックの検出手法の開発は,識別法の検討の一部を室内実験に置き換えて実施した.これらにより,当初の研究目的はすべて達成されたうえ,海洋流れの重要性に関する知見も得ることができた.調査旅費を中心に次年度使用額が生じたものの,研究は当初計画通り,順調に進んでいる.最終年度にあたる2023年度には,購入予定の高照度フリッカー光源を活用して,有効性が確認されたマルチスペクトルカメラにおいて,バンドごとの反射率を高精度に推定する手法を検討する予定である.また,海洋流れの数値計算を実施し,流れの収束とごみの集積の関係を複数の現地海岸で検討するとともに,特性の異なる海岸における機動的現地調査を実施する予定である.
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