高度な微小化学分析システムやソフトロボットへの応用を目指し、人間の手を煩わせずに、電気化学的手法により自立的に送液を行うマイクロフルイディクデバイスの開発を進めた。高度な自立的送液を実現するために、単一機能を有するユニットを組み合わせることを検討した。これらの送液システムでは、複数の微小流路中の異なる2液の電気的接続が必要となる。従来のデバイスでは液絡を用いた接続が行われてきたが、微小化を進め、電圧降下のないものを得ることは容易ではなかった。そこで、両端に銀/塩化銀を形成した金属線あるいはパターンで2液を接続した。これによりデバイスの作製が容易になっただけでなく、確実に動作するデバイスが得られるようになった。また、両端を異なる酸化還元反応に関わる金属とすることにより、金属接続部に電池の機能を持たせることもできた。送液制御の1手法として、毛細管現象による送液を、表面の濡れ性を負の電位印加により変化させるポリピロールバルブを用いて制御した。これと制御用流路中への溶液注入およびそこでの亜鉛電極の酸化反応と連動させることにより、自立的送液を実現した。同様に、制御用流路中の亜鉛電極での酸化反応と主流路中の白金黒微小櫛型電極上での水の電気分解を同時に進行させて水素バブルを生成して、主流路中の必要な液を移動させたり、逆に別の制御用流路中の白金電極上での銀の還元反応と連動させることにより、主流路中の水素バブルを収縮させ、液を逆方向に戻すこともできた。また、これらのユニットを組み合わせることにより、自立的に双方向送液を行うデバイスを作製して、その機能を確認した。
|