研究課題/領域番号 |
21K18913
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
毛利 真一郎 立命館大学, 理工学部, 准教授 (60516037)
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研究分担者 |
荒木 努 立命館大学, 理工学部, 教授 (20312126)
藤井 高志 立命館大学, 総合科学技術研究機構, 教授 (60571685)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | ファンデルワールスエピタキシー / リモートエピタキシー / モアレ超格子 / グラフェン / 窒化物半導体 / 結晶成長 |
研究実績の概要 |
ダングリングボンドを持たないグラフェン上の結晶成長(ファンデルワールスエピタキシー)では、従来の半導体エピタキシャル成長と異なり、格子整合の制約を受けにくい特徴があるが、逆に、核生成の制御や面内方向の拡散を制御することが難しいという問題点がある。 本研究では、グラフェンを2枚重ねた際に生じる『モアレ超格子』と呼ばれる長周期のポテンシャル変調構造を駆動力とすることで上記困難を克服することを目指す。グラフェン同士や基板とグラフェンとの積層角度を変えることで、モアレ超格子の周期やポテンシャル高さを制御し、吸着(核生成)や原子マイグレーションなどの結晶成長因子にどう影響するかを明らかにする。 初年度は、架橋ツイスト2層グラフェン上のInN結晶成長、In金属蒸着を中心に研究を進めた。また、リモートエピタキシーによるInN結晶成長の研究の一環として2層グラフェン上の結晶成長も行い、基板がある場合との比較も行った。 研究成果としては、積層角度の違いによって金属蒸着の核生成密度やその後のInN結晶成長に大きな違いが現れることを示唆する結果を得ている。しかし、積層角度が小さいときに核生成密度が高い傾向にあるため、単純に、モアレ超格子のポテンシャル周期のみを反映しているかどうかは今後検証が必要である。さらに、DERI法(Droplet elimination by radical ion beam 法)による結晶成長の条件として、金属リッチ供給と窒素リッチ供給の時間を1 min:3 min程度にした時が、グラフェンへのダメージが少なく核生成の観察ができることがわかった。また、金属を蒸着した試料でグラフェン自体のラマンピークがシフトしていることをみいだした。この効果を用いて、結晶成長による歪みやキャリアドーピングの変化の評価が行えると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、積層角度の違うグラフェンで核生成に差異があることを検証できたため、順調に研究が進められていると考えている。一方で、モアレ超格子の効果を見るには質の良いグラフェンの利用が必須であり、基板試料の質改善は必須であることもわかってきた。 また、今用いているMBE窒化物半導体結晶成長では、窒素プラズマによるグラフェンへのダメージが大きいことがわかってきたこと、また、その対処につながる原料供給時間の最適化が進められたのは大きな収穫である。
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今後の研究の推進方策 |
2年目は、金属蒸着や窒化物半導体結晶成長に加え、原子層半導体の結晶成長にモアレ効果を利用できないかの検証も行う。さらに、グラフェン以外のモアレ超格子の利用についても検討を行う。 金属蒸着実験や窒化物半導体結晶成長では、より詳細にモアレ超格子形成の効果を見るために、積層角度が異なる試料を多数用意し、ラマン分光やTEM観察でモアレ超格子間隔を事前に測定した場所で成長結晶の観察を行うことで、核生成密度、サイズが積層角度によってどう変化するかを明らかにする。さらに、同時供給法で成長しにくいInNだけではなく、GaNの結晶成長も行う。窒素リッチプロセスをなくすことでプラズマダメージを低減し、モアレ超格子形成過程をより詳細に議論できると考えている。 同様に、窒化物半導体などのダングリングボンドを持つ化合物半導体結晶成長では、結晶成長過程で、欠陥とダングリングボンドとの相互作用が大きな影響を与えうる。そこで、ダングリングボンドを持たない層状原子層半導体の結晶成長でモアレ超格子形成の効果を調べる実験も行いたい。特に、ツイスト2層h-BN上へのグラフェン成長やツイストグラフェン上へのMoS2成長などに取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
発注した、孔開きSiN支持膜上グラフェンが、業者都合により納入が3月末までに間に合わなかったため。今年度に、納入される予定であり、その支払いに使用する。
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