研究実績の概要 |
磁性体をナノスケールで配列した「ナノ構造磁性体」は、その構造に起因した新規な磁性や機能を示す。3次元的に等方的な構造体を形成できれば、あらゆる方向に高い磁気力が得られる次世代磁気デバイスの開発に大きく貢献できる。我々はこれまでに、ランタニド元素の1種で磁気特性に優れたホルミウムを高分子担体に高密度で導入することで、常温で磁石に応答するソフト磁性材料の作製を報告してきた。 本研究では、自己組織化的に組み上がる液晶の秩序性を利用し、ホルミウムに高い配向秩序性を付与し、3次元的に等方的な常温磁性体の作製を目指して研究を行った。その結果、ホルミウムを中心金属とし、β-ジケトン型分子3分子と水1分子が配位した7配位型ホルミウム錯体が得られることを見出した(Inorg. Chem., 2023, 62, 11897)。さらに、この錯体の配位子側鎖に柔軟なアルキル鎖を導入すると、ホルミウムに配位した水分子による水素結合を駆動力としてホルミウム錯体が配列して直径3 nmの球状集合体が自発的に形成され、それらが集積して、3次元的に等方的な構造である、体心立方(BCC)型ミセルキュービック液晶(超分子球アレイ)が得られることを実証した(Adv. Sci., 2024, 20, 202309226)。配位子側鎖のアルキル鎖の炭素数と本数の影響を詳細に調べ、超分子球アレイが形成可能な分子の設計指針を得た。得られた材料はいずれも室温でネオジウム磁石に瞬時に応答し優れた磁気応答を示し、SQUID測定により詳細な磁気特性を解析したところ常磁性を示す材料であることがわかった。今後、これらの材料のより詳細な設計や解析によって構造形成メカニズムがわかれば、BCC型以外の多彩な超分子球アレイの作成や、階層構造に由来する磁気特性の発現などへの応用展開が期待される。
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