研究課題
挑戦的研究(萌芽)
本研究は、固形がんの普遍的な性質であるpHの低下を利用して細胞膜に貫入し、血中の内在性抗体をがん細胞に集積させる分子の開発を目的としている。これにより、ナチュラルキーラー細胞(NK細胞)を活性化してがんを殺傷することを期待している。そこで、pH低下に伴い細胞膜に勧誘するα‐ヘリックスを形成するペプチド配列を種々設計し、抗体のFc部位と結合するペプチドを連結した分子を開発し、がん細胞に抗体を集積させることに成功した。
生体関連化学
現在、がん化学療法の主流は抗体医薬であるが、製造、保存などに問題があり、薬価が極めて高い。このままでは財政破綻を引き起こすため、安価な薬剤で抗体と同じ活性を実現できれば、社会的意義が大きい。本研究で開発する分子は、固形がんの共通の性質であるpHの低下を利用して内在抗体をリクルートしてナチュラルキラー細胞を活性化してがんを治療できるため、一つの分子で種々のがんに適用可能であり、社会的意義は極めて大きい。また、エフェクター作用を抗体以外で実現できる分子として学術的にも価値が高い。