研究課題
新生代に入ると、植物の世界では裸子植物やシダ植物が衰退し、花をつくる被子植物が爆発的に多様化し繁栄するようになった。昆虫類・哺乳類・鳥類などが、被子植物の蜜や果実を利用することで、受粉や種子散布などを多様化させ、お互い相互作用をしながら独自の進化をとげ、現代のような多様な植物(及びそれに伴う動物)が進化したと考えられる。一方、これまでに、ミツバチと花など、多細胞動物―多細胞植物相互作用について、様々な現象が明らかとなっているが、分子レベルでの研究はほとんどない。本研究では、植物感染性線虫と植物をモデル実験系として利用し、多細胞動物―多細胞植物相互作用と、それに伴う進化を分子レベルで紐解くことを目的としている。我々は、これまでに、サツマイモネコブセンチュウの植物誘引物質を複数単離してきており、受容体候補も得ている。本申請研究では、多くの線虫類のゲノム情報を用いて、誘引物質ー受容体の組合せに関する情報量を増やし、そのバリエーションについて網羅的に理解する。そのために、本研究では、BY2培養液から線虫誘引物質の精製を進め、誘引物質の同定を目指した。これまでに、有機溶媒を用いた液液分配を行った。誘引活性を指標に精製をすすめ、その後、ゲル濾過による分子量での分画、極性を用いたカラムによる分画を行い、精製を進めた。さらに、土壌線虫であるC.elegansのゲノム情報を基に線虫誘引物質の受容体の候補を抽出した。様々な植物種の誘引物質と様々な線虫類の受容体情報をもとに、どのような線虫類が、どのような代謝物をもつ宿主を新たに認識できるようになるかの予測方法について、検討した。
2: おおむね順調に進展している
本研究では、BY2培養液から線虫誘引物質の精製を進め、誘引物質の同定を目指した。これまでに、有機溶媒を用いた液液分配を行った。誘引活性を指標に精製をすすめ、その後、ゲル濾過による分子量での分画、極性を用いたカラムによる分画を行い、精製を進めることができた。このように、誘引物質の単離は順調に進んでいる。また、受容体側の推定も行った。また、今後の線虫側の遺伝学的解析についての検討も行い、順調に、本研究は推移していると考えている。
BY2培養液から線虫誘引物質の精製を、さらにすすめ、誘引物質の確定と、論文発表をめざす。また、線虫側の遺伝学的解析に向け、C.elegansを用いた実験系を構築する。具体的には、植物感染性線虫の受容体遺伝子を単離し、C.elegansに遺伝子導入する。形質転換体について、植物感染性線虫の誘引物質における誘引活性を評価する。また、その研究を遂行するにあたり、事前に、C.elegansについて、植物感染性線虫の誘引物質の誘引活性を評価する。このようなヘテロな実験系を用いることで、植物感染性線虫の受容体遺伝子の特定を目指す。
本研究では、BY2培養液から線虫誘引物質の精製を進め、誘引物質の同定を目指している。その中で、線虫誘引物質の精製のために、熊本大学(当時)の石川勇人教授の協力を仰いでいた。しかし、石川教授が、2021年度に千葉大学に移動したため、石川教授が所有していた機器が使えなくなってしまった。2021年度に行った精製の一部は、石川教授に、千葉大学で行って頂いたため、精製に関する消耗品などを、熊本大で支出することはなかった。2022年度は、熊本大学で精製などが出来るように、共通機器などの確保を行った。2021年度に利用予定であった消耗品類は、2022年度に、新たな機械の消耗品などの購入に充当し、2022年度に、熊本大学で行う精製に資する予定である。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (19件) (うち国際共著 9件、 査読あり 19件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 2件)
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