研究課題
リン脂質は細胞膜の構成など、水溶性物質では代替できない機能を発揮する分子群であり、親水性の頭部構造によって分類される。現在のところ約10種類の研究が進んでいるが、生体には未知の脂質がまだ豊富に眠っていると考えられている。新規リン脂質の極性基となり得る水溶性生理活性物質が、実際にリン脂質の頭部として存在するか、総脂質抽出法であるBligh & Dyer法で抽出した画分を疎水性カラムクロマトグラフィー/タンデム質量分析法を用いて検討した。親イオンと娘イオンの質量電荷比をペアとして分子を同定する多重反応モニタリングの方法により、得られた電荷分子量から極性基を同定した。その結果、想定していた幾つかの水溶性生理活性物質がリン脂質の極性基として存在することが判明した。引き続き同方法を用いたターゲット探索で、リストアップした別の水溶性生理活性物質がリン脂質の極性基として存在するのか検証する。すでに見出している新規リン脂質は、合成酵素のノックダウンで顕著にそのレベルが低下する。合成酵素のノックアウトマウスの凍結受精卵を導入し、すでに東京医科歯科大学の動物実験施設にて飼育しており、現在繁殖中である。さらに、申請者は別のアプローチで網羅的なリン脂質極性基の探索を試みる予定(今後の研究の推進方策を参照)である。これらの方法を組み合わせることで、包括的に新規リン脂質を見出すことが可能と思われ、新しい研究分野の創出に繋がることが期待される。
2: おおむね順調に進展している
新規リン脂質の極性基となり得る水溶性生理活性物質が、実際にリン脂質の頭部として存在するか、総脂質抽出法であるBligh & Dyer法で抽出した画分を疎水性カラムクロマトグラフィー/タンデム質量分析法を用いて検討した。親イオンと娘イオンの質量電荷比をペアとして分子を同定する多重反応モニタリングの方法により、得られた電荷分子量から極性基を同定した。その結果、想定していた幾つかの水溶性生理活性物質がリン脂質の極性基として存在することが判明した。引き続き同方法を用いたターゲット探索で、リストアップした別の水溶性生理活性物質がリン脂質の極性基として存在するのか検証する。すでに見出している新規リン脂質は、合成酵素のノックダウンで顕著にそのレベルが低下する。合成酵素のノックアウトマウスの凍結受精卵を導入し、すでに東京医科歯科大学の動物実験施設にて飼育しており、現在繁殖中である。さらに、申請者は別のアプローチで網羅的なリン脂質極性基の探索を試みる予定(今後の研究の推進方策を参照)である。これらの方法を組み合わせることで、包括的に新規リン脂質を見出すことが可能と思われ、新しい研究分野の創出に繋がることが期待される。
引き続き、リストアップした水溶性生理活性物質が極性基になり得るのか検証するとともに、後述する方法を用いて、網羅的に新規リン脂質群の探索を開始する。リン脂質は、強酸性の水溶液中でリン酸エステル結合が加水分解を起こし、極性基が部分的に遊離する。Bligh & Dyer法で抽出した総脂質画分を酸性条件に曝し、極性基を遊離させる。その後、水溶性画分に含まれる低分子物質を網羅的に解析する。解析には、東京医科歯科大学と島津製作所が共同で最近立ち上げた質量分析ファシリティ「シェアラボ」を利用する。主要な水溶性細胞内代謝物質について網羅的な解析が可能となっており、新規の極性基候補分子を見出す。この網羅的解析には、多種多様な細胞株、マウス臓器、さらに疾患サンプルからの総脂質画分を用いる予定である。その検討により、細胞・臓器特異的、あるいは疾患を反映する低分子物質(特異的なリン脂質)の発見を目指している。
すべて 2022 2021 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) 備考 (1件)
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