研究課題/領域番号 |
21K19391
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
秋山 泰身 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, チームリーダー (50327665)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 自己免疫 / 胸腺 / 樹状細胞 / 腸管 |
研究実績の概要 |
T細胞が胸腺で分化する際、自己抗原ペプチドを強く認識するT細胞は、アポトーシスで除去あるいは制御性T細胞に変換され、結果として自己抗原に対する免疫寛容が誘導される本課題は腸管の樹状細胞が各組織で無害な外来抗原を定常的に貪食し、胸腺に移動することで無害な抗原に対する免疫寛容を誘導するとの概念を検証することを目的としている。 胸腺樹状細胞のヘテロジェネイティを明らかにするためにシングルセルRNA-seq(scRNA-seq)とシングルセルATAC解析(scATAC-seq)を統合することで分類したサブセットを明らかにした。ついで、腸管粘膜固有層に存在する樹状細胞のscRNA-seqデータと統合し、腸管と共通して存在する樹状細胞サブセットを同定した。これらの樹状細胞サブセットは腸管から胸腺に移動する可能性がある。 ついでscRNA-seqとscATAC-seqから得られる遺伝子発現とクロマチンアクセシビリティの情報に基づき、各サブセットをフローサイトメーターで分類可能な表面抗原マーカーを決定し、その確認を行なった。さらに同定した表面マーカーを使い、生後から離乳、成体になるまで胸腺樹状細胞サブセットの存在比率や細胞数変化を検討したところ、 CD200Rの発現が高い樹状細胞が、離乳後から著しく増加することが判明した。このサブセットは腸管にも存在するため、食事による腸内環境の変化により変動した可能性がある。 光照射により蛍光色が変化するKaedeマウスの腸管にUV照射する実験を行なったが、照射後に胸腺内で検出されるKaedeタンパク質陽性の樹状細胞の比率が少なく、Kaedeタンパク質の蛍光強度も低いため、現在のところ腸管から胸腺への移動についての確証には至っていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
シングルセル解析から胸腺外から移入する樹状細胞を遺伝子発現とクロマチン構造により分類し、小腸の粘膜固有層にも共通して存在するサブセットと、その表面マーカーを決定できた。またそのサブセットの中で、離乳前後で変化するサブセットを同定することができた。Kaedeマウスを使った腸管からの移動の検討は、現在のところ確証に至っていない点で研究の進行に遅れが出ている。
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今後の研究の推進方策 |
今後はKikGRマウスを使い、樹状細胞特異的Creマウスにより樹状細胞特異的に光変換性タンパク質を発現させることで、高感度の検出を試みる。また蛍光マーカーでラベルされた腸管樹状細胞を採取し、別のマウスに移植することで胸腺に移動するのか検討する。腸管と胸腺で共通して存在する樹状細胞の機能を抑制することで、免疫寛容における重要性を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
光照射により蛍光色が変化するKaedeマウスを使った腸管からの移動の検出に困難を生じ、本年度行う予定であった解析に遅れを生じたため、関連する予算を繰越している。今後、別の光駆動性蛍光タンパク質マウスあるいは樹状細胞の移植実験を行うことで検証し、その結果に基づく機能解析は、次年度の実施計画と並行して進める予定である。
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