研究実績の概要 |
本研究では、複数の腫瘍を対象とし、長鎖シークエンス法を用いた癌と非癌部の転写産物の全長解析から、非コード領域に存在する新規タンパク質コード遺伝子候補を同定し機能を解明することを目的とする。申請者のチームでは、発癌のメカニズム解明を目的として長鎖シークエンス技術を用いた転写産物解析を行っている(申請者が代表の基盤(B)とAMEDの研究で実施)。現在までに、Oxford Nanoporeシークエンサーを用いた転写産物(cDNA)シークエンス法を確立し、解析ソフトウエアを開発した(Kiyose et al. (投稿中))。42人の患者由来の肝癌と非癌部肝臓の転写産物の解析を行った結果、63,629種類(癌部)および44,399種類(非癌部)のスプライシイングバリアントを検出した。タンパク質コード遺伝子について発現量の比較を行った結果、9,965種類のスプライシイングバリアントにおいて、癌部と非癌部で発現量の有意な差が認められた。 我々の解析において、非コード領域の転写産物も同定された。一般に非コード領域にはタンパク質コード遺伝子はほぼ存在しないと考えられるが、近年、非コード領域がタンパク質をコードし、生物学的に重要な役割を担っている例が報告されている。我々の解析結果から非コード領域にある未発見のアミノ酸コード遺伝子を探索するため、我々が取得したデータに対してバイオインフォマティクス解析を行い、候補を絞り、分子生物学的な実験を行う。発現している領域から、ORF(Open Reading Frame)を探索した。その結果、肝癌の癌部と非癌部で非コード領域から発現し長いORFを持つ候補を123箇所同定した。
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