研究課題/領域番号 |
21K19530
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
大内田 研宙 九州大学, 大学病院, 講師 (20452708)
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研究分担者 |
木庭 遼 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (10866776)
小薗 真吾 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (40706850)
三好 圭 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (70755272)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | scRNA-seq / 抗原提示細胞 / 空間情報 / 胃癌 |
研究実績の概要 |
免疫チェックポイント阻害薬の登場は癌治療にパラダイムシフトを起こし、近年、腫瘍免疫微小環境の解明が急速に進んでいる。しかし、腫瘍免疫微小環境のメカニズムについては未だ不明な点が多い。本研究は腫瘍免疫微小環境の重要な構成成分である抗原提示細胞 (antigen presenting cell: APC) に着目し、scRNA-seqを用いて、APCを中心とした腫瘍免疫微小環境を解明することを目的とした。 APCである樹状細胞、マクロファージ、B細胞のheterogenietyや機能関連遺伝子の発現を胃癌微小環境と正常部微小環境で評価した。遺伝子発現から標準型1型DC、標準型2型DC、形質細胞様DC、単球由来DCを同定し、胃癌部で形質細胞様DCの割合が正常粘膜と比較して多いことを確認した。また、マクロファージには遺伝子発現が異なる3つの細胞集団があり、免疫抑制関連遺伝子の発現が高いマクロファージの割合が胃癌部で正常粘膜と比較して高かった。さらにB細胞には未熟性B細胞、活性化B細胞、メモリーB細胞といったheterogeneityを明らかにし、胃癌部では抗体依存性細胞障害性作用に関わる形質細胞のIgG関連遺伝子発現が正常粘膜と比較して有意に高値であった。今後、腫瘍免疫微小環境内でAPCと相互作用している、CD8陽性T細胞や癌関連繊維芽細胞のheterogeneityや機能関連遺伝子発現を評価する。そして、位置情報を維持した高解像度解析 (Visium)を用いて、腫瘍免疫微小環境内におけるAPCの真の役割を解明する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
scRNA-seqを用いた胃癌部の解析で、APCであるDC、マクロファージ、B細胞のheterogeneityを明らかにし、形質細胞様DCと免疫抑制関連遺伝子発現が高いマクロファージの割合が胃癌部で正常粘膜よりも高いことを示した。また、抗体依存性細胞障害性作用に関わる形質細胞のIgG関連遺伝子発現が正常粘膜と比較して有意に高値であることを確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
位置情報を維持した高解像度解析 (Visium)を行うために、まず当施設のホルマリン固定パラフィン包埋標本(FFPE)のRNA品質を評価する。FFPEのRNA品質が低い場合は、凍結切片を対象とした解析を検討する。scRNA-seqで明らかにしたAPCの役割を実証するために、現在胃癌微小環境再現マウスモデルを作成中である。このマウスモデルを用いてAPCを標的とした新規癌治療の開発を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画はおおむね順調に進展しており、資金を有効に使用できたため。次年度は実験用マウス、動物実験用試薬、シングルセル受託解析などの費用に使用予定である。
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