研究課題/領域番号 |
21K19596
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
波多 賢二 大阪大学, 歯学研究科, 准教授 (80444496)
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研究分担者 |
宇佐美 悠 大阪大学, 歯学研究科, 講師 (80444579)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 骨格系幹細胞 / シングルセル解析 |
研究実績の概要 |
本年度は、骨格系細胞集団のシングルセルRNA-seqとクラスタリングを行うことで、骨格系幹細胞を含む様々な分化段階の細胞集団のマーカー遺伝子の探索を行った。Col11-enh-CreマウスとROSA26-CAG-LSL-ZsGreenマウスを交配し、骨格系幹細胞、軟骨細胞および骨芽細胞がZsGreenで標識されたCol11-ZsGreenマウスを作製した。骨格系幹細胞、成熟骨芽細胞および軟骨細胞を多く含む胎生期14日目(E14.5)のCol11-ZsGreenマウスの脛骨をコラゲナーゼ処理により1細胞レベルまで分離した後、10xChromiumシステムを用いてscRNAseqを行った。次世代シークエンサーにより得られたデータをSeuratにより解析し、骨格系幹細胞を含む全ての細胞のクラスタリングとその特異的遺伝子の抽出を行った。その結果、骨格系幹細胞と推察される細胞集団、未熟軟骨細胞から肥大化軟骨細胞まで分化段階の異なる7つの軟骨細胞集団、さらには2つの骨芽細胞集団と1つの腱・靱帯の細胞集団にクラスタリングすることが可能となった。そして、これらの細胞クラスターに特異的な遺伝子を抽出することでマーカー遺伝子の候補となる遺伝子をクローニングした。さらに、これらマーカー候補遺伝子を特異的に認識するRNAプローブを作製し、骨組織での局在をIn Situ Hybridization法により検討したところ、細胞クラスタリングに一致した組織学的局在を示す複数の遺伝子を見出した。これら遺伝子の中には、前肥大化軟骨細胞の新規マーカー遺伝子も含まれていたことから、軟骨細胞分化における遺伝子発現変化の全貌を明らかにすることが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は骨格系幹細胞のみならず様々な分化段階の細胞集団のクラスタリングとマーカー遺伝子の候補を絞り込むことに成功している。しかし、海外からのマウス輸入に時間がかかりマウスの解析を始めるのが遅れたため「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は空間的トランスクリプトミクスを中心に解析を進めていく予定である。そのためのアプローチとして、10xGenomics社によってプラットフォーム化され市販されているVisium空間的遺伝子発現解析システムを用いる。まずはじめにE14.5マウス脛骨の凍結切片から、スライド上のDNAスポットへRNAを抽出するための細胞透過酵素の反応時間を検討する。そして、Visium Gene ExpressionスライドにE14.5マウス脛骨の凍結切片を貼付し、細胞を透過させRNAの抽出とcDNAの生成を行う。その際、スライドの位置情報を含んだDNAバーコードを持ったライブラリーが作製される。得られたライブラリーは3億ペアリード/サンプルで解析し、10X GenomicsのソフトウェアであるSpace Ranger解析パイプランとLoupe Browserによる可視化を行い、E14.5マウス脛骨の遺伝子発現マップを作製する。そして令和3年度の結果と統合し、骨格系幹細胞とその周囲で幹細胞を支持する細胞の遺伝子ネットワークを解析することで、骨組織における骨格系幹細胞の局在と幹細胞ニッチを解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外からのマウス輸入に時間がかかり、マウスの解析を始めるのが遅れたため。マウスは2021年度3月末に入手しており、交配と繁殖を行た後に病理学的解析を始めていく予定である。翌年度分として請求した助成金は、4月からのマウス飼育費、病理切片作製費および免疫組織学的染色に使用する抗体の購入に使用する。
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