研究実績の概要 |
2023年度は、昨年までのシングルセル解析ならびに空間的トランスクリプトーム解析から明らかとなった遺伝子の機能解析を行った。まず、骨格系幹細胞が多く含まれると推測されるPTHrPを特異的に発現するクラスターの遺伝子発現解析を行った結果、このクラスターにはBarx2,Osr1,Irx5およびCreb5の遺伝子が特異的に発現していることを見出した。これらの遺伝子を標識するRNAプローブを作製し、胎生期マウス肢芽のin situハイブリダイ ゼーション法を行った結果、これらの遺伝子は将来関節が形成される部位であるインターゾーンに特異的発現が認められた。インターゾーンには関節軟骨形成に重要な幹細胞が多く含まれていることが明らかとなっていることから、これら遺伝子は骨格系幹細胞の分化や機能維持に重要な遺伝子であると推測される。 次に、これら遺伝子が骨格形成過程において構築する遺伝子ネットワークの解明を行った。骨格系幹細胞に重要な遺伝子を、胎生期E11.5日齢のマウス肢芽より採取した肢芽間葉系細胞に過剰発現させたのちRNAを回収しRNAseqを行った。その結果これら遺伝子はWnt3、Wnt4、Wnt7a、Wnt7bおよびWnt10aといったWntファミリー遺伝子の発現を促進することが明らかとなった。また、GO biological processを対象としたエンリッチメント解析においてもCell Cell signaling by WntやCanonical wnt signaling pathwayといったWntシグナル経路が促進していた。Wntシグナルは幹細胞維持に重要であることが報告されていることから、本研究で明らかにした骨格系幹細胞の維持に重要な遺伝子はWntシグナルを介して骨格形成に関与している可能性が示唆された。
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