研究実績の概要 |
本研究では、生体(細胞)に接続可能で、導電性を有し、かつ伸縮可能なタンパク質ナノファイバーを創製することを目的とする。研究代表者はこれまで、水中、生体温度(37℃)への昇温でナノファイバー化する人工タンパク質である組換エラスチンを開発してきた。このタンパク質はすでに伸縮性と細胞接着性を有しているため、本研究では、ファイバー形成能を保ちつつ、導電性を付与することを目指した。 2021年度は、超高真空クライオ四探針電気伝導測定装置で組換エラスチンナノファイバーGPPG(Sugawara-Narutaki et al., Int. J. Mol. Sci. 2019, 20, 6262)の電気伝導特性を評価し、このタンパク質が絶縁体であることを確認した。さらに、ナノファイバー分散液の小角X線散乱測定を行い、ナノファイバーが電子密度の高いコア領域と電子密度の低い高分子コロナ鎖からなるコア-シース構造を持つことを初めて明らかにした。 最終年度となる2022年度は、GPPGナノファイバー薄膜の大気中二端子I-V測定および交流インピーダンス測定を実施した。湿度上昇により電気伝導性が向上したことから、GPPGナノファイバー薄膜がプロトン伝導体であることを確認した。さらに、プロトン共役電子移動を発現し導電性を持つ組換エラスチンの作製を目指し、従来の組換エラスチンのフェニルアラニン残基をチロシン残基に配列変換した新規誘導体を作製した。円二色性スペクトル測定と透過型電子顕微鏡観察により、この誘導体がナノファイバー形成能を保持していることを確認した。
|