本研究は、1920年代から1950年代における日本の探偵小説ジャンルを、多様な言説から構成される動的な様態として捉え、その在り様を検討した。具体的には、1920‐30年代における「探偵小説」の様相と、それが1950年代に「推理小説」という呼称に代替されていく過程を考察するため、新聞・雑誌を中心とするメディア言説の調査を行った。また、その変遷に重要な役割を果たした木々高太郎、仁木悦子、有馬頼義らの小説・批評実践を検討した。その結果、上記の呼称の推移は、ジャンルへのイメージが戦前から連続する「不健全」なものから「健全」なものへと変遷していったことと相関していたことが明らかとなった。
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