本研究では、明治維新期(明治0~10年代)の地域社会において多数決が定着、運用されていく過程について、①地租改正をめぐる合議の実態を検討し、人々が平等な個人(男性戸主に限定)として相互に承認される市民社会の形成。②町村会の実態を検討し、個人が活動する政治空間(議会)を舞台とした多数決に基づく政治社会の形成。そして、以上の2点の相互作用を通じて、地域社会で多数決による決定が規範化し、人々に対して強制力を伴う政治秩序(近代的政治秩序)の成立を解明した。本研究によって、近世後期から明治10年代における合意形成システムの変容、公議概念の変容、近世社会から近代社会への変容を連関づける視座が提示できた。
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