官営事業払下げ政策の展開を中央と地方、官と民の対抗関係に着目しつつ論じた。特に、明治10年代前半の北海道における開拓使の事業とその払下げ計画、そして同年代後半における東北地方の鉱山払下げをめぐる動向に焦点を合わせた。前者については、開拓使の官員が官営事業を商人に委託するのではなく自ら業務を行うことに強い意欲を持っており、これがいわゆる「開拓使官有物払下げ事件」の背景となったことを明らかにした。後者については、官営鉱山の払下げにあたり、鉱山周辺地域の人々の多くが自分たちへの払下げや官営維持を求めていたことを明らかにし、工部卿佐佐木高行らが彼らの希望を受け入れなかった理由を検討した。
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