研究課題/領域番号 |
21K20178
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
王 文潔 大阪大学, 人間科学研究科, 助教 (10913270)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | 復興 / みなし仮設 / 在宅被災者 / 生活再建 / 災害ケースマネジメント / 地域ネットワーク / ボランティア / 地域支え合いセンター |
研究実績の概要 |
本研究の目的は社会的に注目度が低く、支援のノウハウが顕在化してこなかった「潜在的被災者」(みなし仮設被災者、在宅被災者、被害が少ない地域の住民など)に対して、市民エージェントがなぜ、いかにして支援を行うのかを明らかにすることである。「社会的弱者」や「災害弱者」といった概念が長らく注目されてきたように、声をあげられない人々の存在を察知し、既存システムにこだわらない支援の在り方が議論されてきた。一方で熊本地震後にみなし仮設住宅が主流化し災害も頻発する中で表面化していない被災者が増加しているが、これらの人々に対する支援の窮状は見過ごされている。本研究では、多様な市民エージェントによる潜在的被災者への支援の実態を明らかにするとともに、潜在的被災者が発生する社会構造要因を解明し、有効な支援方策を探求する。 2021年度内は、新型コロナウイルスの感染状況が落ち着いている時期に、令和2年7月豪雨の被災地である久留米市や人吉市で被災者支援活動を行ったNPO、任意団体の職員などを対象としたインタビュー調査を実施した。調査を通して住宅半壊判定以下の在宅被災者とみなし仮設被災者の物資拠点の取り組みや生活再建相談の状況を把握できた。またこうした潜在的被災者への支援を行う上で、制度化された人員育成の方策及び地域内外ネットワークの構築に関しても重要な知見が得られた。コロナ禍において対面調査による研究を十分展開できない中、WEBインタビューの手法を取り入れたほか、生活困窮者支援などの関連分野及び、本研究課題に関連する法律・制度に関する日本国内外の文献の収集及び分析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題はフィールドワークを中心とするものであり、新型コロナウイルス感染症の影響により、今年度実施予定であったコミュニティ内の調査や対面インタビューが制限された。加えて、調査対象団体の職員の業務が大幅に増加したため、調査協力を得ることが難しくなっていることも原因としてあげられる。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は社会状況を踏まえ、昨年度見合わせることとなったフィールド調査を進めていく予定である。特に支援団体が実施する予定の潜在的被災者への個別訪問に同行し、生活再建の相談支援など具体的な実践策を整理する必要がある。また昨年度の調査では、新型コロナウイルス感染症の影響により、他地域に及ぶ支援活動に支障が生じ支援活動の人員確保が困難である一方で、オンライン相談などで潜在的被災者へアプローチする取り組みも増えていることが確認できた。こうした社会情勢の中で新たな支援の課題や現場の動きも視野に入れ研究を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大期における旅費の使用が難しくなったことが主な理由である。 今後、フィールド調査に加え文献調査やオンライン等を活用した調査を実施する際に使用する。
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