本研究の目的は、多様な博物館種に共通する学芸員の能力・スキルとして最も注目されているものの、いまだその内実が明確でない「対市民教育活動=教育普及活動に関する能力・スキル」に焦点を当て、その具体的な能力・スキル要素を計量的に明らかにし、実際の学芸員教育に資することである。初年度に、学芸員を対象にした半構造化インタビュー調査実施のための質問項目の作成にあたり、研究計画当初にはなかった方法も追加した。その方法は、博物館学芸員養成課程を設置している292の大学が公表しているシラバス(博物館教育論ほか対照として博物館資料保存論、博物館実習)をデータソースとし、項目の抽出と数量化を進めることである。シラバスの内容から項目を抽出しデータベースとした。とりわけ、養成課程担当者の専門と専任・非常勤等についての情報は、シラバスには載っていないことが多く、研究代表者がリサーチマップや大学ホームページより情報収集を行う必要があった。そのため、現段階では、292大学すべての調査は完了しておらず、能力・スキル分析を行うには至っていない。 しかし、この2年間で、学芸員養成課程を設置している105校について、21の項目を収録した「データベース」を作成することができた。今後も調査対象校は残っているものの、例えば、個々の科目について数値で示した項目群などは、これまでにない有用なデータであると考えている。今後は、この「データベース」の更新作業を行いつつ、教育普及活動に関する能力・スキルについての分析を試みていきたい。
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