研究課題/領域番号 |
21K20257
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
HOU YUEJIANG 秋田大学, 教育文化学部, 講師 (70913531)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2024-03-31
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キーワード | 環境移行 / 社会的排斥 / 環境の不確実性 |
研究実績の概要 |
本研究は、他人からの社会的関係のシグナル(受け入れられる、排除される等)への感受性が、社会環境の変化にどのように影響を受けるかを検討している。具体的には、高校から大学への移行期を焦点に据え、移行期と非移行期、そして排斥の手がかりの有無が排斥感やストレスの認識にどのような影響を与えるかを明らかにすることを目的としている。この研究により、社会的排斥に敏感な時期や状況についての理解を深め、新たな教育環境への適応を支援する戦略の提案につながると期待される。 今年度は以下の活動を行った。 ①まず、既定の計画に基づき、予備実験を実施した。この実験では、課題に対する反応として生じる脳波(事象関連電位)のデータを取得し、分析を行った。 ②次に、移行期と非移行期で排斥感の感度がなぜ変わるかというメカニズムについて追究した。特に、新しい社会環境(大学)への不確実性に注目し、その認識がどう変わるかを検討した。大学生を対象に進学後の経験について調査し、その結果をもとに新たな測定尺度の開発に取り組んだ。 ③社会的環境の不確実性の認知が排斥シグナルによるディストレスの喚起に及ぼす影響には、個人差が存在し、その個人差要因として愛着スタイル、特に見捨てられ不安に着目した。環境の不確実性を操作し、見捨てられ不安の程度によって対人的な信頼行動の変化を明らかにする実験の準備を進めた。 以上の活動を通じて、高校から大学への移行期における社会的排斥感の理解を深めるとともに、これらの情報が学生の適応支援にどのように活用できるかを考察するための基礎データを得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験室の環境整備に時間を要した。具体的には、既存の設備を用いて予備実験として行動データと脳波データの取得を進めていた際に、無視できないレベルで外来ノイズの周波数帯域が混入していることが明らかになり、防音電磁シールドルームの必要性が生じた。それに伴い、各種予算の調整と、購入や施設管理に関する手続きが必要となった。昨年度の末頃に当該設備の整備が完了したため、予備実験等もそれに伴い若干の遅れが生じた。 しかし、予備実験自体は滞りなく終了し、また、大学生の進学後の経験について調査し、その結果に基づいた新たな測定尺度の開発ができたことから、当初想定していなかった研究の進捗もある。そのため、当初の計画通りに概ね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、以下3つの研究計画に則って進める。 1つ目は、サイバーボール課題を行う実験室実験によって、社会的排斥に対する検知感度が、個人を取り巻く社会的環境の変化によって調整されるか否かを検討する。具体的な方法として、大学生を対象とした実験を行い、サイバーボール課題において自分にパスが回ってこない条件(排斥条件)がもたらす心理的ディストレス(主観報告)、排斥の検知(事象関連電位成分fERN)、排斥事象に対する注意補足(事象関連電位成分P3)が、時期要因(移行期と非移行期)によって調整されるか否かを検証する。 2つ目は、場面想定法によって提示される3つの架空の状況(排斥刺激、微排斥刺激、受容刺激)が、実験参加者の心理的欲求の充足度に及ぼす影響力を検討するとともに、その影響力が時期要因(移行期と非移行期)、比較的状況依存的で不安定的な個人差要因(環境の不確実性の認知の程度)によって調整されるか否かを検討する。 3つ目は、排斥感受性やそれに伴う心理的ディストレスに影響を与える要素として、比較的安定的な個人差要因である「愛着スタイル」に焦点を当てた研究を行う。特に「見捨てられることへの不安」が強い人々の反応を詳しく調査することで、極端な不適応に陥りやすいリスクを持つ個人に関する知見を導出することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画の変更により、予定通りの本実験の参加者へ支払う謝礼の分は未使用である。 2023年度に実験と調査の協力者の謝礼として使用する予定となる。
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