研究課題
今年度は、火星地上でダストストーム及び大気波動の発生が確認された2016年9月の電離圏の応答に着目した。特に、ひさき衛星によって観測された火星熱圏の水素原子及び酸素原子の特徴的周期変動が火星電離圏に及ぼす影響を調べるため、同時期に火星探査機MAVENによって観測されたイオン質量分析器のデータ解析を進めた。その結果、電離圏中のH+、O+、O2+、CO2+イオン密度がさまざまな周期(1日~20日)をもって変動することが明らかになった。特に、ひさき衛星によって観測された熱圏大気の周期と一致する周期がイオンの密度変動にも観測された。これは火星熱圏中の原子・分子が周期的な化学反応によって生成・消失する効果が電離圏プラズマの生成・消失にも影響が及んでいることを示唆している。本研究内容は論文としてまとめ国際誌に投稿し、出版された。本研究計画を通じて、火星のダストストーム期間中に地上で発生する大気波動の影響を受け、火星熱圏中の水素原子や酸素原子の総量が周期的かつ交互に増減する現象を発見した。この影響は電離圏のイオン密度にも影響を及ぼすことも明らかになり、結果、流出するイオンのフラックスにも影響を及ぼすと考えられる。なお、本研究計画ではダストストームや大気波動が発生している1期間(2016年9月)のデータ解析にとどまってしまったため、今後は観測期間を広げ、この周期変動が火星において一般的に起こっている現象なのかを調べる点が課題となる。これにより、火星のダストストームや大気波動が火星の大気流出へ果たす役割の理解が進むと考えられる。
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Journal of Geophysical Research: Space Physics
巻: 129 ページ: ー
10.1029/2023JA031848