研究実績の概要 |
本研究では、申請者が同定した犬悪性黒色腫の新規治療標的である「PDPN-ROCKシグナル」の阻害による新たな全身療法の確立を目指した前臨床研究を行う。
本年度は、PDPNを高発現する犬悪性黒色腫細胞株2株を用いて、PDPNのノックアウト実験を行い、PDPN欠損株の機能変化およびシグナル変化、網羅的遺伝子発現変化の検証を行ってきた。その結果、PDPN欠損株のトランスウェルアッセイ、マトリゲルアッセイ、WST1増殖アッセイ、AnnexinV FACS染色法を用いた解析により、移動能、浸潤能、増殖能が有意に低下し、アポトーシス細胞率が有意に上昇していることを明らかにした。さらに、PDPN欠損株を免疫不全マウス(BALB/c nu/nu)に移植したところ、腫瘍の成長が有意に抑制された。ウェスタンブロットを用いたPDPN欠損株のシグナル解析では、ROCKシグナル(p-MYPT1, p-MLC2)およびERK, p38, JNKなどのMAPK(mitogen-activated protein kinase)経路分子の活性化の低下が認められた。網羅的遺伝子発現変化については、現在、RNAシークエンス解析が完了し、得られたデータの解析を行なっている。
上記実験結果より、犬悪性黒色腫において、PDPNおよびROCKシグナルを介した移動能、浸潤能、増殖能の獲得が示唆されたことから、犬悪性黒色腫細胞株にROCK阻害剤3剤(Fasudil, Y-27632, GSK269962A)の添加を行ったところ、PDPN欠損株と同様に移動能、浸潤能、増殖能の低下およびアポトーシスの誘導が認められた。現在、ROCK阻害剤添加時のシグナル変化の解析やin vivo実験の準備を進めている。
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